拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>10.AVパソコン(下)

2004/11/08 16:51

週刊BCN 2004年11月08日vol.1063掲載

 AV(音響・映像)パソコンの2回目にあたる今回は、企業用途におけるAVパソコンについて考察する。(守岡太郎 野村総合研究所 コンサルティング部門 情報・通信コンサルティング二部)

 オフィスにおいて、テレビ放送コンテンツをパソコン上で利用するシーンは、放送事業者などの特定業種を除いて、今後大きく拡大するとは考えがたい。したがって、今回はカメラを搭載し、動画処理機能に優れたパソコンをAVパソコンと定義する。

 企業における動画利用については、大きな成長が期待されるアプリケーションが2つある。1つはeラーニング、もう1つはテレビ電話である。

 企業における社員教育(いわゆる企業研修)においてパソコンなどを利用するeラーニング市場の伸びを、eラーニングで利用する教育用コンテンツからみてみる。

 教育用コンテンツの市場規模は2003年で400億円と推計されているが、ここ2-3年は年率50%前後の高い成長を続け、06年には1000億円を超えるものとNRI(野村総合研究所)では予測している(これらの数値には、携帯電話やPDAなどでの利用分や自己研鑽分も含まれる)。

 企業研修の内容は概して企業機密に類することから、管理性の高いeラーニングの形態は好まれる傾向にある。従って、今後も高い成長を続けるものと考えられる。

 一方、テレビ電話の利用は、企業内電話のIP電話化に牽引される形で拡大する見通しである。最近ではオフィス移転などを機に、企業内電話をIP電話に移行する企業が多い。LANと電話回線の二重敷設コストや、そのメンテナンスコストを削減するためである(NRIでは、複数拠点をもつ従業員100人以上の企業の導入率は07年末に50%を超えると予測)。

 IP電話の導入により、電話とパソコンの連動、すなわちテレビ電話や画面を共有しての共同作業など、効率的な情報伝達が可能となる。

 テレビ電話は、利用者の心理的抵抗感から一般家庭においては普及が進まない状況にあったものの、企業においてはこれまでにも拠点間の打ち合せなどにテレビ会議システムが導入されているように、テレビ電話への抵抗は比較的少ないとみられている。

 これまでのIP電話の導入事例では、音声通話のみの利用が主流であったが、今後は、より効率的な情報伝達を求め、パソコン連動型のIP電話の導入が着実に進むであろう。

 これら2つのアプリケーションの相乗効果により、今後オフィスにおいてもAVパソコンが急速に普及するものと考えられる。
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