店頭流通

エレコム、ロジテック買収で業界第3位に

2004/11/15 18:45

週刊BCN 2004年11月15日vol.1064掲載

 マウスなどパソコンサプライのトップメーカーであるエレコム(葉田順治社長)が周辺機器メーカーへの変身を果たす。11月2日に、周辺機器メーカーであるロジテック(星野雄之輔社長)の株式譲渡に関して、筆頭株主の丸紅インフォテック(梅﨑哲雄社長)および主要株主の丸紅(勝俣宣夫社長)と基本合意した。ロジテックを傘下に納めることで、国内第3位の売上規模、国内最大規模の取扱製品数のパソコン周辺機器メーカーとなる。パソコンおよび関連機器市場は、アジア勢の低価格攻勢などで厳しい状況が続く。エレコムは、サプライ品だけでは市場で淘汰されると判断した。この戦略が周辺機器市場でどのような影響を及ぼすかに注目が集まる。(佐相彰彦●取材/文)

パソコン周辺機器メーカーの一角に名乗り
サプライメーカーから脱皮図る

■企画開発力と技術力 2社のノウハウを生かす

 エレコムのロジテック買収は、今年12月24日をめどに、丸紅と丸紅インフォテックが持つロジテックの全株式をエレコムが100%取得することで実現する。

 今回の買収におけるエレコムのメリットは、ロジテックがパソコン周辺機器メーカーとして多くの優良顧客を獲得していることや、エレコムとロジテックの製品群が重複せずお互いに補完できること、ロジテックの国内生産拠点を活用して柔軟なカスタマイズが可能なこと──などが挙げられる。

 なかでも、「(ロジテックの)ストレージ事業の検証能力が優れている点で大きなメリットがある。生産拠点である伊那工場(長野県伊那市)の“頑固一徹なモノづくり”がロジテックの強み」とエレコムの葉田社長も絶賛。ロジテックを傘下に納めることで、成長分野であるデジタル家電機器とパソコンおよび関連機器の融合製品に関する取り組みの強化を図るだけでなく、ストレージ製品が加わることで法人向けの売上比率のアップ、さらに中国や韓国、英国、独国などにおける海外ビジネスの拡大など一連のビジネス強化を加速していく方針だ。

 ロジテックの星野社長は、「価格や開発スピードなど競争が激しくなり、パソコン周辺機器を取り巻く環境は大きく変化している。当社の技術とエレコムの製品企画力や海外での部材調達力を生かし、製品開発力の強化や新規分野への製品投入を積極的に行っていきたい」と、戦略的なビジネスモデル構築につながるとしている。

 一方、丸紅インフォテックにとっては、今年10月1日付で子会社のコンピュータウェーブを吸収し、「合併効果が問われている段階にある」(増岡康夫取締役)と、IT関連ビジネスのテコ入れに経営資源を集中して取り組むべき時にあるという点からロジテック売却という判断を下したという。「ロジテックは、2000年度(01年3月期)に売上高214億円、経常利益3億円以上を計上し、上場準備を進めていた。しかし、台湾などアジア勢の国内進出および低価格攻勢で、00年度以降は逆に業績悪化の道をたどっていた。収益確保が難しくなったため、V字回復に向けた提携先を探していた矢先、エレコムから打診があった」(同)としており、「最先端の企画開発力をもつエレコムであれば、V字回復が達成できる」(同)という結論に達した。

 国内流通に関しては、丸紅インフォテックを通じて行うほか、丸紅インフォテックと競合する流通商社にも製品を卸す。ロジテックが手がけていた法人向けビジネスに関しては、今後2年間は丸紅インフォテックが引き続き営業を担当することになる。

■製品数は国内最大規模 デジタル家電市場進出への第1歩

 昨年度(04年3月期)におけるエレコムとロジテックの売上高を単純合算すると400億円を超える。これによりエレコムはバッファロー、アイ・オー・データ機器に次ぐ業界第3位のパソコン周辺機器メーカーになる。

 バッファローのサプライ事業参入に対抗して、メモリの販売に着手するなど事業の拡大を図っているエレコムにとっては、ロジテックの買収は、サプライメーカーから周辺機器メーカーとなるためには不可欠だった。しかも、家電やAV(音響・映像)のデジタル化が進み、パソコン分野とデジタル家電分野が融合するとの見方が強いなか、周辺機器メーカーとして「新しい分野にビジネス領域を拡大していく」(葉田社長)ためには実力のあるロジテック買収は渡りに船。葉田社長は、デジタル家電市場への進出を加速するためにロジテックが得意とする「ストレージ事業を手がけることが重要」(同)だったと語る。

 ロジテックを子会社とすることで、サプライ品と周辺機器を含めた製品数に関しては4500種類以上と国内最大規模になる。エレコムは、これまでファブレス(生産の外部委託)方式を採用していたが、ロジテックの国内生産拠点を活用した製造メーカーとなる。エレコムの製品企画力とロジテックの生産能力を組み合わせ、「AV関連のストレージを含めた商品開発が行える」(葉田社長)のは強みになるだろう。

 葉田社長は、「今の周辺機器事業の売上比率は約15%。この比率はロジテックの買収で45%まで増える。今後は、周辺機器事業が中心になり、将来は約70%を占めることになる」と、デジタル家電市場への本格参入でシェアを拡大していく姿勢を示す。

 「パソコン市場が成熟期に入る一方で、薄型テレビなどデジタルAV機器市場が急速に拡大している。パソコンおよび周辺機器メーカーは新規事業への着手や新市場の創出が急務」(葉田社長)とし、生き残りのためには周辺機器の拡大は必要だったという。周辺機器ビジネスをメインとするために、エレコムが事業領域の拡大を目指していくとなれば、パソコン周辺機器業界に一石を投じることになるのは間違いないだろう。

パソコン周辺機器メーカーの新規参入  
 
 パソコン周辺機器市場でメーカーが新規事業に参入する動きが出てきている。ネットワーク機器や増設メモリなど、さまざまな分野でトップシェアを誇るバッファローは、今年7月にパソコンサプライ市場に参入、第1弾としてマウスやキーボード、ケーブル類などを発売した。売上高は、今年度(2005年3月期)に10億円、カテゴリーの拡大などをテコに06年度には100億円規模を目指している。
 バッファローのサプライ市場参入は、パソコン初級者でもサプライ製品なら手軽に購入できるため、顧客層の
裾野を広げられるからだ。初心者を顧客として囲い込むことで、同社の無線LAN関連機器や無線LAN自動設定技術「A.O.S.S」などの普及を加速し、デジタルホーム市場を開拓していく。
 バッファローの親会社であるメルコホールディングスの牧誠社長は、「将来、家庭内のパソコンや家電をネットワークでつなぐ“デジタルホーム”が当たり前になる。その実現の過程では、パソコン周辺機器がカギになる」と強調。パソコンと家電をネットワークで接続するニーズに対応して製品展開する方針を打ち出している。
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