秋葉原物語

<秋葉原物語>[第1部 ポテンシャル]5.一段と“儲かる街”に

2004/11/29 16:51

週刊BCN 2004年11月29日vol.1066掲載

 東京・秋葉原地区が世界のIT拠点として生まれ変わり、安心できる街へと再開発が進むことで、秋葉原の集客力が急速に高まっていく期待は大きい。秋葉原のパソコン専門店および家電量販店にとっての期待は大きい。ここで集客の向上をいかに生かせるかという点がビジネス拡大に結びつけるカギになってくる。

 60社以上の企業が会員となる任意団体、秋葉原電気街振興会の小野一志会長(オノデン社長)は、「ITセンターの『秋葉原クロスフィールド』をはじめ、さまざまな高層ビルが建ち並び、多くの企業が秋葉原地区に集まることは、大変ありがたい」と歓迎しており、「この地区で商売している以上、街の変貌とともに買い物客を増やし、電気街を一段と“儲かる街”として成長することを考えなければならない」と、時代の流れや環境の変化をつかんだ取り組みの必要性を強調する。

 同振興会が模索しているのは、「電気街をエレクトロニクスの新しいフィールドにすること」(小野会長)。秋葉原クロスフィールドには、産官学連携機能や情報ネットワーク機能などを集積する目的で、大学や企業などが入居することになる。「学生やベンチャーが開発した新しい技術を公開するために電気街を活用してもらうというのも1つの手だ」と、小野会長は訴える。例えば、ハードウェアおよびソフトウェアとして商品化して各ショップの店頭で販売することや、来店者に新技術を体験してもらうためのデモコーナーの設置、休日に歩行者天国になる中央通りを活用して新技術を披露するイベントの開催などが考えられるというわけだ。

 ラジオ部品から電子部品を中心とした販売で“電気街”として定着した秋葉原地区は、ラジオからテレビ、オーディオ、パソコンへと時代の変遷を見てきた。しかし、主役の交代に伴い販売店が仕入れた商品を単に売るだけしか機能しなくなってきたことも事実だ。インターネットやメールによるパソコンブームでは、単なる小売りの役目でも十分に収益につながった。しかし、パソコンの家庭普及率が高まり、しかも各地で家電量販店が店を構えるという現状では、秋葉原電気街の優位性はなくなりつつあるのが事実。駅前周辺の再開発は、電気街にとって“秋葉原らしいモノづくり”に回帰するきっかけになるチャンスでもある。(佐相彰彦)
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