秋葉原物語

<秋葉原物語>[第1部 ポテンシャル]6.地域発の“モノづくり”を

2004/12/06 16:51

週刊BCN 2004年12月06日vol.1067掲載

 東京・秋葉原電気街がその名の通り、情報通信機器やデジタルAV(音響・映像)の販売で、日本でポピュラーな街であることに変わりはない。しかし、ここ1-2年の大手家電量販店各社による電気街以外、特に郊外での出店により、消費者が自宅近くのショップに行けばパソコンが購入できる環境や過剰なまでの低価格競争により、電気街のパソコン専門店や家電量販店が優位性を保てない状況が出現した。

 もともと、電気街はラジオなどの部品販売を中心に形成された。こうした流れを汲むのか、秋葉原の組立パソコン用パーツショップは根強くユーザーを獲得している。しかし、完成品の販売が主流のショップは、結局は価格競争に巻き込まれている状況だ。

 秋葉原電気街振興会の小野一志会長(オノデン社長)は、「完成されたハードウェアやパッケージソフトを仕入れて販売するという“箱売り”では、低価格競争になった場合、粗利率を縮めるだけ」と話す。

 差別化を図るカギの1つになる接客面については、ある業界関係者が、「量販店によって異なるが、2000年までは接客しなくてもパソコンが売れていたためといえるが、パソコン販売を始めてから電気街のショップは接客の質が落ちてしまった」と嘆く。秋葉原電気街がその地位を確保していくためには、“昔ながら”の電気街らしさをアピールできる“気風”の復活が必要かもしれない。

 電気街の慣習そのものを変えなければならない要素も出てきた。小野会長は、「深夜営業を視野に入れなければならない」と話す。「秋葉原クロスフィールド」の「秋葉原ダイビルUX」が完成すれば、電気街の集客アップは確実。「終電まで多くの人が電気街を歩く可能性も出てくる。深夜営業でユーザーに商品を購入してもらうという商売面に加え、街自体が明るいという安全性の面もある」として、多くの会員企業が営業時間の延長に賛同を示しているという。

 秋葉原電気街振興会がモノづくりの回帰に向け、将来的に着目しているのが「ロボット」。「デジタル家電など現時点で話題になっている商材を販売する一方で、世界にはない取り組みを行うことも必要」と夢は大きい。「秋葉原に行けばロボットが作れる、そういう新しいエッセンスを電気街に加えれば、エレクトロニクスの街として世界にアピールできる」と期待する。

 来年2月には、東アジア地域からの観光客を増やすため、秋葉原電気街振興会は秋葉原西口商店街振興組合を支援する。モノづくりを切り口としたイベントなどの実施も、当然ながら出てくるはずだ。(佐相彰彦)
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