店頭流通

サイトビジネスを強化する販売店

2004/12/06 16:51

週刊BCN 2004年12月06日vol.1067掲載

商品数増加やサービス拡充相次ぐ

他業界からの参入で競争激化


 パソコン専門店および家電量販店が、サイトビジネスの強化を図っている。各社が運営するネットショップでは、商品数の増加や新アイテムの追加、サービスの充実が相次いでいる。ネットでの購入に抵抗がない消費者が増え、ユーザー層が広がっていることが直接的な要因だ。ネットを使った通信販売大手のアマゾンジャパンがパソコンを取り扱うようになったことも、こうした動きを加速している。ネット販売は一段と競争が激しくなることが必至。各社がネットショップに参入してきたことで、競合との差別化を図り、パワーアップしたサイト作りに腐心している。(佐相彰彦●取材/文)

■玩具や女性向け海外ブランド品も 各社とも軒並み売上増

 大手ネットショップ「ヨドバシ・ドットコム」を運営するカメラ量販店のヨドバシカメラは、現段階で8万点あるアイテム数を2005年度(06年3月期)中に約30万点まで引き上げる。銀塩カメラやデジタルカメラなどのカメラ関連機器をはじめ、デジタル家電といったヨドバシカメラが得意とする商材の強化も行う。さらに子供向けの玩具、バッグやスカーフといった女性向けの海外ブランド品なども大幅に増やしていく計画だ。

 吉澤勉・グッドコミュニケーション本部長は、「最近では、土日に男性が(ネットで)食器洗い器や冷蔵庫などを購入するケースが増えている」という。これは、「家族で量販店に行く感覚でネットショップにアクセスしている」(吉澤本部長)ことが理由だ。アクセスしているユーザーの年齢層は20-40歳代と家族持ちがほとんど。子供向けの玩具を増やすのは、「子供がいる家族に対し、家電の購入のついでに玩具を購入させる」ことが狙い。海外ブランド品の充実は、平日の夜などに女性がサイトを訪れているためだ。

 今年度(05年3月期)上期は、薄型テレビやDVDレコーダーなどの販売が前年同期に比べ3倍程度アップ。サイト全体の売上高も、「前年同期比40%程度増えた」(同)と好調だった。下期も、デジタル家電の販売が拡大するとみており、「今年度通期で300億円の売上規模まで引き上げたい。最低でも270億円はクリアする」(同)と昨年度実績の210億円を確実に上回る自信をみせる。

 家電量販店のムラウチは、「ムラウチ・ドットコム」の中に玩具や生活雑貨などの販売コーナーを昨年秋に設けた。さらに、今年に入ってからは電子書籍のダウンロード販売にも乗り出した。同社でも、「サイトを訪れるユーザーが土日に集中している」(矢澤克哲・執行役員EC事業本部長)という。休日に家族にせがまれてネットショップを見る場合が多いようだ。商材の強化はこうしたユーザーを顧客として獲得するのが目的。近くテレビ台や音楽CDを収納するラックなどファニチャーコーナーを新設する予定で、今年度(05年3月期)は、売上高63億8000万円(前年度比17%増)を見込む。

■アマゾンジャパン、パソコンと家電の販売開始 ソフマップはサイトで買取査定

 パソコン専門店でも、アイテム数の増加やサービスの強化などネットビジネス拡大に力を注いでいる。

 サクセスは、「ピーシーサクセス」をリニューアルし、アイテム数をリニューアル前の2万5000点から35万点まで大幅に増やした。映画などのDVDソフトを新しく商品として追加したほか、ビジネスソフトの大幅な拡充、マウスなどパソコンサプライ品やアクセサリー品、DVDレコーダーなどデジタルAV(音響・映像)機器の品揃えも充実させた。

 ネットショップの利用者がパソコン上級者から、中級者、初級者へと裾野を広げており、「1年前までは30-40歳代の男性が大半を占めていたが、最近では女性のネット購入者が顧客全体の10%を超えるなど顧客層が変化してきている。さらに顧客を増やすためには、パソコンビギナーが購入しそうなアイテムを強化することが重要」(谷口怜・営業部長)と判断。今年度は、ネットショップで前年度の1.9倍にあたる240億円の売り上げを狙う。

 BTO(受注生産方式)パソコンの販売が主流のアロシステムは、「ウェブサイトでBTOビジネス本来の強みを出していく」(大野三規社長)として、「パソコン工房」のウェブサイトをリニューアルした。組立パソコン用パーツをはじめパソコン関連機器のアイテム数を増やしたほか、「ハイエンド」や「ビジネス」、「ゲーム」、「省スペース」などパソコンの用途を目的別に分類し、ユーザーが購入しやすい環境を整えた。ネットビジネスの売上高は、昨年度(04年3月期)の70億円を来年度(06年3月期)に100億円規模にする方針。

 ネットショップ大手の「ソフマップ・ドットコム」を運営するソフマップでは、「商品アイテムを増やすことに加え、自社の強みを生かしたサービスを強化することも重要」(松田信行・総合企画部広報・IR室長)とし、リユース事業の拡大を図っている。中古パソコンの買取サービスとして、サイトでパソコンの買取査定サービスを提供しているほか、自宅まで指定配送業者が引き取りに行く「らくらく買取サービス」、日本郵政公社との協業で「ゆうぱっく」による中古ソフトの買取サービスなど、わざわざユーザーが中古パソコンを店頭に持っていかなくても済むサービスを提供している。

 家電量販業界でネットショップの強化が加速しているのは、ネットショップ最大手のアマゾンジャパンが昨年末から「エレクトロニクス」というカテゴリでパソコンや家電の販売を始めたことと無縁ではない。パソコンショップや家電量販店の間では、「今後は、通販業界のサイトも競合として意識しなければならない」というのが共通の見解。ネットでの商品購入が普通になれば、業界を超えて参入する企業が相次ぐことが予想される。今以上に競争が激化することは確実で、各社とも競合サイトとの差別化を明確にすることが、ネットショップでの売り上げアップのカギになる。

携帯電話がユーザー拡大を後押し  
 
 アマゾンジャパンが携帯電話のネットショップ「Amazon Anywhere」をリニューアルした。パソコン上でのオンラインストア「Amazon.co.jp」で扱う商品をすべて購入できるようにしたほか、携帯電話のバーコードリーダーを使って商品情報が検索できる「アマゾンスキャンサーチ」機能を追加。ユーザーは、携帯電話の画面上に対象の商品詳細ページを表示して商品情報を確認しながらショッピングが可能となる。
 「Amazon.co.jp」は、今年9月時点で380万のユーザーを獲得した。同社のジャスパー・チャン社長は、「携帯電話は単に通話するだけでなく、インターネットやメールを楽しんだりカメラで撮影するなど、さまざまな用途がある。ユーザ
ー層は幅広い」としており、パソコンユーザーとは異なった新しい需要を獲得できるという点からサービスを強化したことになる。全体の売上高のうち、携帯電話が占める割合については具体的な数値を明らかにしていないものの、「パソコンのネット機能がモバイルでも活用できることが当たり前になり、今後は伸びていく」と自信をみせる。
 ネットショップでさまざまな商品を販売するのであれば、携帯電話のネットショップも視野に入れることがビジネス拡大のカギになる。ヨドバシカメラでも、「携帯電話でどのような商品を購入するかを分析したうえで、サービス開始を検討したい」(吉澤本部長)としている。
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