秋葉原物語

<秋葉原物語>[第1部 ポテンシャル]10.歩くだけでトレンドがわかる

2005/01/10 16:51

週刊BCN 2005年01月10日vol.1071掲載

  「秋葉原に行くとトレンドを読むことができる」──。大塚商会の大塚裕司社長は、小学生の頃から秋葉原に通い続けている。大塚社長にとっての秋葉原は、趣味の街というだけでなく、新しいトレンドがどこから起ころうとしているのか情報をつかみに行く場所でもあるという。(三浦優子)

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 最初に秋葉原に行ったのは、小学校6年生ぐらいだったと思います。テープレコーダーとテレビをつなぐケーブルを買いに行ったんじゃないかな。もちろん、普通のケーブルだったら他の街でも買うことができるけれど、欲しい長さのケーブルを探すとなると、やはり秋葉原に行かないと見つけることはできないから。

 中学生、高校生の頃はオーディオが好きで、真空管を探し求めて秋葉原に行ったり。大学生になってからは、マイコンを探しに行くようになりました。

 やはり、秋葉原というのはマニアに特化した街だからこそ面白いんだと思います。

 秋葉原の街を歩いていて、「どうも面白くないなあ」と自分で感じる時期というのは、やはり商品にも活気がなくて、行き詰まっている時期なんです。例えば、オーディオもあまりに狭い世界に行きすぎて、マニアである私が見ていても、面白くないなぁと思うところに行ってしまった。その辺りから、商品を扱う店がどんどん減って行きました。今、パソコンも同じような状況になってしまっているような気がします。

 街を歩くことでトレンドを読むことができる、これが秋葉原のもう1つの魅力ですね。例えば今年の冬だったら、ちょっと前はプラズマテレビがわーっと並んでいたけれど、年末にはそれがプリンタに取って代わっている。今、お店が何を売ろうとしているのか、街を歩けばキャッチできるんです。

 ただし、最近は普通のお店が多くなっちゃった。アダルト商品を扱う店が増えたこともあって、新宿駅の西口界隈とそう変わらない街になってしまった。もうちょっと、歩いていて「なんだ、この店は?」と思うような店がある方が楽しいと思います。

 個人的に珍しい商品を購入するのも、最近はインターネットオークションを利用することが増えました。秋葉原にしかない珍しいものを探すことが、オークションのようなものに置き換えられてしまった部分もあるんじゃないかと思いますね。(談)
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