店頭流通

<ショールームを活用せよ>2 ソニー

2005/01/10 18:45

週刊BCN 2005年01月10日vol.1071掲載

 シリーズ第2弾はソニーである。近年のソニーが各分野で苦戦していることは周知の事実だが、しかしその高品質でデザインセンスの良い製品群には熱心なファンも多い。現状の打開と新規の需要の開拓には何らかのカンフル剤が必要との見方は多かったが、そのソニーからの一手が、これまでと違うコンセプトのショールーム「ソニー・スタイル」である。店舗の機能も持つ「ソニー・スタイル」は全米各地に展開中で、評判も上々だ。米国でも最も著名なIT企業の1つであるソニーにとって、ショールームに求められているものは何なのであろうか。(田中秀憲(ジャーナリスト)●取材/文)

メーカー自ら店舗展開

■高級感を演出

 「ソニー・スタイル」はソニー自らの手による新しい店舗展開だ。2003年にカリフォルニアに第1号店が開店。昨年末時点で全米各地に12店舗を展開している。各店舗は高級ショッピングモール内にあり、グッチやルイ・ヴィトンなどの有名ブランド店と同様の高級感を演出している。ソニーによると、06年までに30店舗ほどをオープンさせる予定という。「ソニー・スタイル」の展開は、ソニー製品の販売拠点として重要な地位を占めるものと期待されており、実際にその成果は見え始めているようだ。


■専門知識を持った従業員を配置

 「ソニー・スタイル」のマンハッタン店は、以前はソニーのショールームがあった場所にある。そのため、広さは約3000平方フィート(約278.7平方メートル)と、他の店舗よりも若干狭い。もっとも、ニューヨーク郊外在住の顧客のために、昨年12月にはニュージャージーに新たな店舗をオープンしている。

 マンハッタン店は3つのフロアに分かれている。店内には約20人の接客担当者が常駐し、来客からの質問や問い合わせに答えている。マンハッタン店のアンソニー・デドメニコ・ストアマネージャーは、「我々の使命はソニーの製品をより良く知ってもらうこと。そのために、各従業員は専門的な知識を持っている者ばかり。このような対応は大手の量販チェーンでは望めない」と話す。この店舗展開の重要性を強調し、実際にソニーのイメージアップに大きく貢献しているようだ。


■詳しい情報提供の場に

 しかし、ソニー自らの手による店舗展開は若干の波紋も起こしている。米国では、自らが販売網をもたない家電メーカーは珍しくはない。メーカーの多くは販売拠点を大手の販売チェーンや小売店に依存しており、近年のオンラインショップの普及もありこの傾向はいまだに続いている。このような状況から、卸元であるはずのメーカー自らが販売に乗り出すことを快く思わない小売店も多い。また、「ソニー・スタイル」のほとんどが有名ブランドが多く入居するショッピングモールに出店していることもあり、普及価格帯商品を多く扱う中小販売店からは不満の声もあがっているという。

 この点について、デドメニコ・ストアマネージャーは「不十分な知識で悩むよりはきちんとした説明を受ける方が、消費者は自分の目的にあった商品かどうかが判断できる」と話す。

 ソニー製品の詳しい情報提供の場が消費者に求められていること、そして何より、他社製品と同じように並べられた状態ではソニー製品の真価を伝えることができないと強調する。

 実際にショールーム内の一角には家庭のリビングルームを模した視聴室なども用意され、より具体的にソニー製品のプレゼンテーションが行えるようになっている。

 ショールーム内に足を踏み入れると、ソニーの製品分野の広さに驚かされる。ソニーへの理解を深めることのできる「ソニー・スタイル」は、他の家電メーカーから顧客を奪い取る有効な手段といえそうだ。デドメニコ・ストアマネージャーは最後に「BUY SONY!」とメッセージを残した。「ソニー・スタイル」を見る限り、今後のソニーは期待できそうである。

  • 1