拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>19.電子ブック(上)

2005/01/17 16:51

週刊BCN 2005年01月17日vol.1072掲載

 電子ブック市場の母体となる紙の市場(出版市場)は、2003年度で2.3兆円(うち書籍が0.9兆円)であった。それに対し、電子ブックが対象とする電子書籍市場は約20億円と推計され(電子辞書およびPDA・専用端末などの端末機器市場を除く)、電子ブックの市場は、紙の市場と比べると、まだ萌芽の段階であるといえる。電子ブックが対象とする電子書籍市場は、まずパソコン向けのサービスから始まり、携帯電話向け、そして専用端末である電子ブック向けへと広がり始めている。(小林孝嗣 野村総合研究所 コンサルティング部門 情報・通信コンサルティング二部)

 具体的に各サービスの動向を見てみると、パソコン向けの有料サービスでは、最古参の「電子書店パピレス」をはじめ、出版社12社が共同運営している「電子文庫パブリ」、イーブックイニシアティブジャパンの「10daysBook」、凸版印刷の「ビットウェイブックス」、シャープの「Space TOWNブックス」、楽天の「楽天ダウンロード」などのサイトでコンテンツの提供が行われている。また、最近のブロードバンド化の進展を受けて、パソコン向けのサービス自体も拡大傾向にあり、例えば04年からは、ポータル最大手のヤフーが小学館と提携し、同社のコミックの配信を始めている。

 次に携帯電話向けのサービスは、新潮社が02年に「新潮ケータイ文庫」を開始。03年になると、パソコンでサービスを行っていたシャープ、パピレス、凸版印刷や、PDA向けにサービスを行っていたミュージックシーオージェーピー、角川書店の子会社である角川デジックス(バンダイネットワークスと共同)などが参入し、04年には凸版印刷がFOMA向けに特化したサイトを開始した。

 また、auが提供しているEZチャンネルでは、コミックチャンネルという形で、携帯電話端末向けにコミックを配信するサービスも登場。定額制度の導入を受け、利用が拡大している。

 また、前述のような電子書籍という範疇には入らないが、関連する市場として、電子辞書市場が存在する。電子辞書市場は、電子書籍市場と比べると先行しており、03年では500億円程度の規模に成長している。これは60-70冊ものコンテンツを全部収納することで、紙のままでは10kg以上にもなり持ち歩きができないものを、200g前後の機器に入れ、ポケットに入れて持ち運べるようになったり、複数辞書で一括検索できるという利便性を実現したことによる。

 ただ、電子辞書の場合、その普及により紙の辞書の市場が縮小し、出版社にとっては逆に収益性が悪化。将来的にコンテンツの更新ができなくなるといった新たな問題も出てきている。
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