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デジタル家電一色の「2005 CES」 パソコンはリビング・ハブへ

2005/01/17 16:51

週刊BCN 2005年01月17日vol.1072掲載

 デジタル家電一色──。1月6-9日の4日間、米国ラスベガス(ネバダ州)で開催された世界最大の家電およびコンピュータ関連展示会「2005インターナショナルコンシューマエレクトロニクスショー(CES)」は、世界110か国・地域2400社が出展し、大画面薄型テレビ、次世代DVDなど各社のデジタル戦略で覇を競った。デジタル家電に押されてはいるが、コンピュータメーカーもデジタル家電を意識した戦略を強化するなど、デジタル家電が成長戦略の中心になった。(田澤理恵●取材/文)

ホームネットワークの時代鮮明に

■HP、ホームサーバー戦略をアピール

 コンピュータ大手、ヒューレット・パッカード(HP)のカーリー・フィオリーナ会長兼CEOは「2005 CES」の基調講演で、昨年のCESで発表した以上にデジタルホーム戦略を推し進めていく方針を明らかにした。DVDレコーダーやデジタルカメラのデータなど、コンシューマが保有するデータは大容量化している。それらのデータの保管や活用を集約するホームサーバーを軸とした戦略に、HPなどのパソコンメーカーは本格的にシフトしようとしている。

 講演でフィオリーナ会長兼CEOは、居間のテレビやDVDレコーダー、パソコンなどのスタンドアロン製品を1つに統合するホームネットワーク製品を今秋にも発売する予定を明らかにした。これは、パソコンを介さなくても利用できるため、パソコンユーザー以外にも販路が広がるとして、新たな市場開拓を狙っている。コンピュータベンダーであるHPにとって、従来にない製品として自信を見せた。実際、HPのブースでは家電関連の製品展示が多かった。

 HP以外でも、シャープは液晶テレビとリアプロジェクションテレビという“主役”のほかに、米国向けに「日本で販売している『AVセンターパソコン』か、もしくはウィンドウズXPメディアセンターエディション搭載の新たなパソコンを米国市場に投入するかどうかを検討している」(シャープ関係者)という。

 デルも自社ブースでリビングでの利用を訴求、松下電器産業のパナソニックブースでは、パソコン機能は搭載していないホームサーバーの試作品を展示。これらの展示を見るだけで、各社が米国市場でのホームサーバー普及に本格的な動きを見せていることがわかる。

■2005年のポイントはメディアサーバー

 インテルのクレイグ・バレットCEOは基調講演で、「今年1年で、コンピュータとワイヤレスブロードバンドにより各種デバイスを統合するホームネットワークの時代に変化していく」と語った。CPUメーカーのトランスメタのブースでは、同社のCPU「エフィシオン」とOS「ウィンドウズメディアセンター」を搭載した機器を展示。「冷却ファンの無いことによる静音性がリビングのハブ(車軸)としての役割を担うパソコンに生かせる」とアピール。チップメーカーも積極的に、デジタル家電やホームネットワーク市場へのビジネス展開を打ち出している。

 パソコンメーカーは活況を呈しているデジタル家電を、家電メーカーはスタンドアロン製品である家電をパソコンとの連携による生活の利便性アップをアピールするなど、それぞれの機器の相乗効果を狙った戦略も見えてきた。

 今回のCESでは、2005年に注目すべきテクノロジーの1つとして、メディアサーバーが挙げられていた。CESを運営する米国家電協会(CEA)が発表したレポートでは、「08年までに米国の家庭の52%以上でホームネットワークが実現するようになる」としている。ワイヤレスブロードバンドで使用する周波数帯域やコンテンツの著作権の問題など、課題は残されているものの、これらが解決されれば本格的な普及が始まるだろう。

 デジタル家電へのシフトでパソコンは消えるのか──。この問いに対する答えの1つは、コンシューマ向けのパソコンはこれまでのパソコンとは姿を変えて、ホームネットワークの“要”となるリビングのハブに変貌していく、ということだ。今回のCESで、その姿がはっきりしたと言えるだろう。
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