店頭流通
<ショールームを活用せよ>4(最終回) アップルコンピュータ
2005/01/31 18:45
週刊BCN 2005年01月31日vol.1074掲載
Macのイメージ向上に貢献
■SOHO地区の中心にアップルストア第1号店は、ニューヨークで2002年7月に開店した。それ以降、約13日に1店のペースで新店舗をオープンしており、現在では日本と英国を含め100店舗以上を展開する。03年にはアップルストア全体で約12億ドルの売り上げを記録。累計で5100万人が店舗を訪れたという。
マンハッタンのアップルストアは、ニューヨークの中で最もお洒落な街の1つとして知られるSOHO(ソーホー)地区の中心にある。かつては郵便局だった建物は、落ち着いたクラシック調の外観。しかし1歩中に入ると近代的な内装と展示で来客を圧倒する。

1階ではその階段の左右に各種製品がずらりと並べられている。来客同士が狭さを感じないように、通路の幅に余裕を持たせている。黒ずくめのスタイリッシュなユニフォームに身を固めたスタッフが多数常駐し、来客の質問に答えたりアドバイスをする。
フロア内は家庭用、プロ向け、写真関係、音楽制作、そしてiPodと、それぞれのコーナーを設け、来客が目的に応じた製品に触れることができるようになっている。
2階はアクセサリーや各種ソフトウェア、書籍を販売。また、技術的な相談に専門のスタッフが対応するカウンターがある。さらに、ホールも用意されており、アプリケーションのデモや各種のセミナーなど、さまざまなイベントが行われている。
■iPod関連を多数展示
開店当初との最大の違いは、種類が増えたiPodのためのスペースが広く確保されている点。さらにiPod関連のアクセサリー類も多数展示。実際に手にとって見比べることができる。この界隈は特にファッションに興味のある人が多く集まる。たまたま立ち寄った人へのアピール度も非常に高いものとなっている。
ビジネスの中心地からあえて離れたこの場所にショールームを構えたアップルコンピュータの意図は成功したと言えるだろう。開店時はもちろん、現在でもアップルストアの情報はSOHOのファッショナブルなイメージと重なって伝えられることが多い。アップルのユーザーに多いといわれる流行に敏感な若者向けへの直接的なマーケティングスペースとして、大きな役割を果たしている。
■アップルストア・ミニの計画も
現在、ニューヨーク市近郊には数店のアップルストアがある。そのどれもが高級住宅地近くのショッピングモールへの出店だ。iPodの成功はアップルコンピュータを活性化させ、アップルストアとのイメージ戦略も軌を一にしている。今後もアップルストアは、同社の躍進にとって重要な役割を果たすことだろう。また将来は、より小規模な店舗展開であるアップルストア・ミニの計画もあるという。
マンハッタンにはメーカー直営のショールームは多くない。コンシューマ向け製品を持つ多くのITメーカーは、ショールームの役割を量販店に求めており、各種経費が高騰しているマンハッタンでの直営店にはメリットを感じていないようだ。しかし敢えてそこにショールームを構える企業こそが、いずれも元気が良い印象を与えるというのは、やはり活気に溢れているからではないだろうか。後に続くIT企業がより多くマンハッタンに進出してくることを期待している。

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