店頭流通

ビックカメラとソフマップ 生き残りに企業規模拡大

2005/02/07 18:45

週刊BCN 2005年02月07日vol.1075掲載

 1月31日付でビックカメラ(新井隆司社長)がソフマップ(山科光男社長)の筆頭株主となった。家電量販業界では、企業統合や資本・業務提携が相次いでいる。今回の提携も、ソフマップが2004年度(05年2月期)の業績見通しを下方修正したこともあり、ビックカメラがソフマップを支援するという見方が強い。しかし、その一方でカメラ量販店とパソコンを中心としたデジタル専門店が初めて提携したという点で、両社の強みを発揮する新しい店舗業態を打ち出してくることも考えられる。(佐相彰彦●取材/文)

カメラ量販とデジタル専門、初の提携

■閉店相次ぐ家電量販業界

 家電量販業界では、企業統合や資本・業務提携が加速し、再編の方向へと進んでいる。

 最近の企業統合では、昨年4月1日に大手家電量販店のケーズデンキと中堅量販店のギガスが事業統合し、「ギガスケーズデンキ」としてスタートを切った。さらに、ギガスケーズデンキは同年10月1日に八千代ムセン電機を傘下に納め、家電量販業界でのポジションを高めることに心血を注いでいる。ギガスケーズデンキの場合、現在3000億円強の売上高を2010年度に1兆円規模まで引き上げる方針を打ち出している。

 昨年度(04年9月期)の業績で大幅に落ち込んだオーエー・システム・プラザは、ピーシーデポコーポレーションから資本および業務の支援を受け、経営再建を実施。ピーシーデポのノウハウを吸収し、競合他社に対抗できる価格戦略および品揃えの確保などに力を入れている。

 こうした状況は、家電量販業界でヤマダ電機が今期(05年3月期)1兆円の売上高を達成する見込みにあるなか、企業規模で競合他社に対抗するか、もしくは専門性を追求するといった差別化を図らなければ生き残れないためだ。

 ソフマップは、リユース事業を強みとしながらも、新品パソコンをはじめとした情報関連機器の価格下落により、昨年10月に発表した04年度(05年2月期)通期連結業績見通し売上高1100億円、経常利益4億円、最終利益150億円を、1月24日に売上高1060億円、経常損失6億6000万円、最終損失4億9000万円と赤字に修正した。この段階でビックカメラが丸紅の持ち株を購入することなどにより、資本参加することで合意した。あるパソコン専門店の幹部は、「(ソフマップは)新品パソコンの激しい価格競争で相当なダメージを受けた」と指摘する。

■各地域で新店舗戦略の可能性

 しかし、今回の提携はソフマップが経営不振を理由に、ビックカメラが経営支援に乗り出したとは考えにくい。店舗や地域戦略、商品の販売形態、人材などについては、「具体的な内容は今後詰める。さまざまな角度から、お互いが協力し合えるように慎重に決めていく」(ビックカメラの広報担当者)。つまり「両社の強みを発揮したビジネスを行う」(同)ために、業績が悪化したソフマップと強い絆を結ぶことにした、とも見える。

 カメラおよび関連機器、パソコンや液晶テレビ、白物家電などに加え、玩具やスポーツ用品、酒類など幅広い商材を扱うビックカメラと、中古品としてパソコンのほかデジタルカメラや薄型テレビ、DVDレコーダー、DVDソフトなどを販売するソフマップのビジネスモデルを合わせることで、新品にも中古にも強いビジネスモデルを構築できる。

 確かに、両社の店舗が重なる地域もあり、ビックカメラとソフマップが共同戦線を張ることで競合店舗を凌駕する可能性は高い。両社ともに出店している地域は、JR有楽町駅前やJR名古屋駅前など競合の激しい地域。一方の店舗をビックカメラの幅広い商材とソフマップのパソコンに関する専門知識を合わせた新品のショップに、もう一方をパソコンやデジタル家電を豊富に揃えた中古専門店にするといった戦略が1つの方法として考えられるだろう。

 また、ビックカメラが進出していない秋葉原ではソフマップの店舗を利用することも考えられる。同地区には今年9月にヨドバシカメラが進出する。両社のノウハウを集結することで巨艦店に対抗する1つの策になる、といった見方ができないわけではない。
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