拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>23.地上デジタル放送

2005/02/14 16:51

週刊BCN 2005年02月14日vol.1076掲載

 2003年末に放送が開始された地上デジタル放送は、現在対応エリアの拡大も順調に進み、いよいよ本格的な普及期を迎えようとしている。(北林 謙 野村総合研究所 コンサルティング部門 情報・通信コンサルティング二部)

 現行の地上アナログ放送が地上デジタル放送へ移行すると、どんなメリットがあるのだろうか。視聴者にとっては、(1)HD-TV(高品位テレビ)の高品質な映像・音声サービス、(2)データ放送、(3)インターネットと連携した双方向通信サービス、(4)携帯電話や車載端末で画質の良いテレビ放送を受信できるサービス──などの新サービスを利用できる。

 放送事業者にとっては、サイマル放送を1日のなかで自由に編成してタイムシフト放送を行うことが可能になるなど、番組編成の自由度が向上する。また、交付される放送枠(13セグメントに分割された6MHz周波数帯)の1セグメントを利用して携帯電話などのモバイル機器向け放送(いわゆる1セグ放送)を行うことが検討されている。

 総務省の放送普及基本計画によると、06年から全国で地上デジタル放送を開始、07年にはアナログ周波数変更対策(いわゆるアナアナ変換)が終了、2011年にはアナログ放送の停止というスケジュールである。アナアナ変換は04年9月末で33%程度の進捗率であり、当初計画を3年程度前倒しするなど、いまのところ順調に進んでいるように見える。しかし、アナログ放送の停止が予定されている2011年までに、デジタル完全移行がなされるかは依然不透明である。

 その要因の1つとして、デジタル放送対応テレビの普及スピードが挙げられる。現在のデジタルテレビは、デジタル放送チューナー部分が未だ高価なこともあり、薄型などの高価格帯のテレビにとどまっている。その結果、薄型テレビのデジタル放送対応率は45%に達しているにもかからず、テレビ全体では2割程度にとどまっている。

 野村総合研究所(NRI)の推計によると、2011年度末時点でストックベースのテレビ台数は約1.2億台ある中で、デジタル放送対応テレビは6000万台程度しか普及が期待できない。地上放送の公共性を考慮すると、地上アナログ放送受信が必要な世帯が数多く残存するうちは、何らかの補償措置がない限り地上アナログ放送を完全に停止することができないのではないかと、危ぶまれている。

 一方、1セグ放送は06年中の開始を目指してサービス設計が進められている。利用シーンを広げるだけでなく、放送と通信が連携した新しいサービスの登場が期待されるが、放送業界と通信業界とで取り組み姿勢に若干の温度差がみられる。
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