秋葉原物語

<秋葉原物語>[第2部 エボリューション]16.人の流れが変わる

2005/02/21 16:51

週刊BCN 2005年02月21日vol.1077掲載

 東京・秋葉原電気街に店を構える家電量販店やパソコン専門店、組立パソコン用パーツショップ、飲食店など、さまざまなショップが駅前の超高層ビル「秋葉原クロスフィールド」の完成で期待しているのは、集客力のさらなる高まりだ。

 秋葉原駅の乗降客は1日平均で28万人前後といわれているが、「秋葉原クロスフィールドの完成で、現状の10%は増えることは確実だろう」と、多くのショップが口々に話す。集客増への期待は、自店へも来店者が増加し、売り上げの伸びにつながると試算しているからだ。

 フィギュアやアニメのパソコンゲーム、コスプレ喫茶など、エンターテインメント性の高い商材を扱うショップが数多く出店しているため、最近電気街に訪れる客層は、パソコンマニアとは異なる層が増えている。

 だからといって、パソコンユーザーが訪れなくなったかというと、そうではない。街に新しい文化が色濃くなっても、昔ながらの文化も淘汰されず残っているのが電気街の魅力だ。

 事象として記憶に新しいのは、電気街の中心地、中央通り沿いにオープンした深夜営業を武器とするドン・キホーテの出店だ。

 朝5時までの営業というこれまでの電気街にとっては異例の営業時間にもかかわらず、深夜0時以降でも来店者が訪れるなど、街に新しい風を吹き込むことになった。少しでも多くの来店者を増やそうと、営業時間を延長した他のショップもあるほどだ。

 秋葉原クロスフィールドに入居する企業や大学の研究室などにより、以前から街に根付いていたエレクトロニクスの“色”が一段と濃くなり、しかもIT企業の社員やコンピュータ関連の勉学に励む学生が最先端の技術に触れるため、家電量販店やパソコン専門店、組立パソコン用パーツショップを頻繁に訪れることは間違いないだろう。

 また、飲食店などの出店が多くなるとともに、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」など、政府による海外からの観光客誘致策、千代田区内の関係団体による来訪者増への取り組みなどにより、コンピュータとは縁がなかった客層も訪れるケースが出てくる。

 秋葉原クロスフィールドの入居者をリピーターとして確保するため、他の地域のショップの一歩先を行く先端製品で顧客を惹きつけたり、パソコンに馴染みがない層を新規顧客として獲得する。そのため新しい商材を意欲的に手がけるなど、パソコンショップは昔ながらの良い文化を継承しつつも、これからの時流に沿ったビジネススタイルを模索していく必要がある。(佐相彰彦)
  • 1