秋葉原物語

<秋葉原物語>[第2部 エボリューション]20.動き出す産学連携

2005/03/21 16:51

週刊BCN 2005年03月21日vol.1081掲載

 JR秋葉原駅前の超高層ビル「秋葉原クロスフィールド」の1つ、「秋葉原ダイビル」がほぼ完成、同ビルの主要機能となる「産学連携フロア」に入居するテナントも決まり、いよいよ3月31日の稼働を待つばかりとなった。

 産学連携フロアの入居テナントには大学機関が多い。各大学とも、電気街と隣接しているというメリットを生かし、IT関連の講座や、ITに関する学部や学科の新設などを目玉にしている。

 北海道の稚内北星学園大学では、IT技術者養成を目的に、新しいオープンな標準技術にフォーカスし、ITの現場で必要となる実践的なカリキュラムを作成する。ほかにも、コンピュータ関連に長けた受講者向けという電気街ならではのゼミの開設や、ブロードバンドを活用したIT技術者教育コンテンツの配信などを行う。

 筑波大学は、「つくばエクスプレス」の開業をにらみ、秋葉原を新しい拠点と捉えて社会人向け夜間開講の法科大学院を開設する。設置場所を「秋葉原ダイビル」にするのは、法科大学院が社会人を対象としており、ITを活用した学習の効率化を図る情報インフラが充実していることが必要と判断したためだ。また、秋葉原クロスフィールドによるIT産業の集積を有効に活用した短期プログラムやシンポジウム、公開講座などを検討している。埼玉県岩槻市の人間総合科学大学は、eラーニング学習システムの開発研究を推進するほか、「IT技術」と「人間総合科学」の融合を視野に入れた研究を行う。

 遠隔地にある大学が進出するだけではない。秋葉原から歩いてすぐの本郷にある東京大学は、情報分野で実践的創造力を有する人材を育成する「創造情報学専攻」を新設。神田にある東京電機大学は、大学発ベンチャーが利用できるオフィスの提供、電気街の地域特性を生かした地域貢献講座や資格取得講座を開設する。神田・駿河台が本拠地の明治大学は、IT系の産学連携、研究・教育のサテライト拠点と位置付けており、インターネットと携帯端末を活用したユビキタスコンピューティングの研究・教育、技術相談室や知的資産センターとの共同デモ展示場を設置する。

 秋葉原クロスフィールドの運営会社であるクロスフィールドマネジメントでは、「秋葉原ダイビルの産学連携フロアは、これまで実現できなかった企業と大学の連携を可能にする」(山口俊行・ゼネラルマネージャー)と意欲を燃やしており、「産学の共同研究を実証できる場として、秋葉原ダイビルのイベントスペースを活用するほか、電気街のショップとの連携も重要になる」(同)と訴える。(佐相彰彦)
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