店頭流通

アップルコンピュータ、iPodで業績絶好調 気になるマッキントッシュへの波及効果

2005/04/25 16:51

週刊BCN 2005年04月25日vol.1086掲載

 米アップルコンピュータが発表した2005年度第2四半期(1-3月期)の業績は、税引後利益が前年同期比6倍と絶好調だった。携帯音楽プレーヤー「iPod」が牽引役を果たしている。ただ問題は、iPodの成功がウィンドウズユーザーのマッキントッシュへの乗り換えにつながるのかどうかだ。マックへの波及効果がなければ、同社の将来は必ずしも明るいといえないからだ。

 米アップルコンピュータの05年度第2四半期の売上高は、前年同期比70%増の32億4000万ドル、税引後利益が2億9000万ドルだった。利益が昨年同期の4600万ドルの6倍に一気に跳ね上がったわけだ。

 小型デスクトップのマックミニやノートパソコンのパワーブックの売り上げも好調だったが、一番の功労者はiPod。iPodは3か月間で531万個を販売。売上高は10億1000万ドルと、全体の31%を占めるまでに成長している。

 またiPodの売上高の40%は海外での売り上げ。海外市場も大きく貢献した。

 米国内でもiPodは、ハードディスク搭載型デジタル音楽プレーヤー市場(店頭販売)の89.3%を握っているといわれる。また新しく発売されたフラッシュメモリベースのiPod shuffle(シャッフル)も好調で、2月の時点で米国の店頭販売のフラッシュメモリベースのデジタル音楽プレーヤーの市場の45%を占めている。

 アップルからiPodをOEM(相手先ブランドによる生産)供給してもらっているヒューレット・パッカード(HP)は、2万5000万枚のデジタル写真を記憶できる30ギガバイトと60ギガバイトのiPodを発表するなど、iPod周辺は非常に華やかなムードが漂っているといえそう。

 iPod登場以前は、アップルがらみの大きなニュースといえば、基本ソフト(OS)の改訂版のリリース日の予定だった。今回の決算発表でも新OS「Mac OS X 10.4 Tiger(タイガー)」のリリース日が発表されたが、iPodがほとんどの話題を奪った形だ。

 確かにiPodは過去2年間のアップルの業績建て直しに大きく貢献した。しかし、それでもiPodの売り上げはまだ全体の3分の1程度。残りの3分の2はパソコンの売り上げだ。しかもiPodは一時の流行の可能性がある。今はまだiPodの独壇場のデジタル音楽プレーヤー市場だが、競合社が今後力を入れてくるのは間違いない。

 マイクロソフトは、音楽だけではなく映像などの機能も搭載したポータブル機種の開発に力を入れているし、ソニーは子会社で携帯電話メーカーのソニー・エリクソンから音楽再生機能付きの電話を発売している。ソニーはまた、ポータブルゲーム機のPSP(プレイステーション・ポータブル)に音楽機能を搭載して、iPodのシェアを奪う戦略だ。iPodが先行したからといって未来永劫、立場が安泰というわけでは決してない。

 つまり、アップルが業績の伸びを維持するには、iPod同様の勢いが本業のパソコン部門にも波及しなければならないわけだ。

 アップルの最高経営責任者スティーブ・ジョブズ氏は、iPodのユーザーでウィンドウズユーザーがマッキントッシュへ乗り換え始めるはずだと以前から予測している。マックミニは、そうしたウィンドウズユーザーをターゲットにしたものだ。

 果たしてiPod特需効果はマックにまで波及するのだろうか。アップルによると、店頭でマックを購入する人の5人のうち2人は、マックを初めて購入するユーザーという。つまりマックへの乗り換えが進んでいるというわけだ。

 昨年末からの数字をみる限り、iPodのマックへの波及効果は確かに確認できる。

 04年末のパソコン市場におけるマックのシェアは3.2%。03年末の2.9%から伸びている。

 調査会社ガートナーグループの昨年10-12月期のパソコン販売台数統計によると、マックの売り上げの伸びは25%だった。市場全体の伸び幅10.9%を大きく上回っている。

 しかもこれらの数字は、ウィンドウズマシンを狙い打つマックミニの発売以前のものだ。金融サービス会社のパイパージェフリーは、マックのシェアは今後2、3年にかけてさらに拡大する見通しとの見解を明らかにしている。マック栄光の時代が再び来るのだろうか。(湯川鶴章)
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