店頭流通

<キヤノン販売 芦澤光二常務に聞く>コンシューマ系商品の下期販売戦略

2005/09/12 18:45

週刊BCN 2005年09月12日vol.1104掲載

 キヤノンは8月23日、コンパクトデジタルカメラ2機種、ハイアマチュア向け一眼レフデジカメ1機種、プロ用デジカメ1機種、交換レンズ2本、フォトプリンタ3機種を発表した。ジャンルの異なる商品をこのように一挙に発表するのはきわめて珍しいが、販売を担当するキヤノン販売でいえば、いずれも「コンスーマ マーケティングカンパニー」の担当商品である。芦澤光二・常務取締役プレジデントに下期の販売戦略を聞いた。

三段構えで戦略商品を投入

■店頭商品を担当、上期は2%増に

 ――コンスーマ マーケティングカンパニーのミッションと担当商品群を教えてください。

芦澤
 店頭ルートで売れる商品の担当が役割です。商品としては、社内的にはインプット系、アウトプット系に分けています。インプット系ではコンパクトデジカメ、一眼レフデジカメ、デジタルビデオカメラ、スキャナ。アウトプット系ではインクジェットプリンタ、フォト専用プリンタ、パーソナル用コピー機/ファクシミリ、SOHO向けLBPプリンタなどがあります。それに当社が家電系の皆様とお付き合いを始めたのは電卓からですが、その電卓や電子辞典も扱っています。

 ――上期の実績はいかがでしたか。

芦澤
 キヤノングループは1-12月決算ですが、上期の(1-6月)のコンシューマ機器の売上高は前年同期比102%の1101億円でした。主力製品の一つであるコンパクトデジカメは、市場の成熟化にともない国内市場はシュリンク傾向にあるというアゲインストの風が吹いているわけですが、当社の場合は台数、金額とも伸ばすことができました。IXY DIGITAL600、IXY DIGITAL55の健闘が効きました。

 一眼レフデジタルはいままさに急成長期にありますが、EOS Kiss DigitalNの新規投入など、常に市場のリード役を果たし、シェアもダントツのトップを維持しました。交換レンズも好調です。

 ――デジカメでは、何かの拍子に画像が消えるという問題が指摘されておりましたが。

芦澤
 その症状が指摘されてすぐホームページで対応策を公開してきましたが、ソフトウェアの比重が増えているがための現象でした。何かの操作の組み合わせで症状が出るわけです。われわれも何万通りもの操作の組み合わせを想定しながら検証しているんですが、想定外の操作をなされる方がおられる。メカニック時代には考えられなかったことで、ソフトの怖さを体感させられました。この経験を元に、キヤノングループあげて、万全な商品をお届けすべく、体制を作っています。

 ――その他の商品はいかがでした。

芦澤
 インクジェットプリンタは、単能機の市場は縮小、複合機が伸び始めているわけですが、残念だったのは複合機の物不足でした。下期に向けての反省材料です。

 現在力を入れている製品にデジタルビデオカメラがあり、上期はまずまずでしたが、下期は一気に飛躍しますよ。

■第1弾はデジタルビデオカメラ

――では下期の戦略についてお聞きします。基本的にはどんな構想を立てておられるのですか。

芦澤
 コンスーマ市場というのは、年末商戦を抱えた下期が主戦場になるわけですが、それに向けて着々と準備を進めてきました。第1弾としてはデジタルビデオカメラの新製品を発表しました。第2弾がデジカメとフォトプリンタの新製品群ですが、これも発表済みです。第3弾として複合プリンタの投入を考えています。

 ――デジタルビデオカメラはキヤノンにとって新しいジャンルの商品ですね。

芦澤
 静止画のキヤノンから、動画でも認知される企業になろうということで力を入れているのがデジタルビデオカメラです。上期はBCNさんのデータでも3位のシェアを確保していますが、下期はもう1つランクを上げたいと思っています。

 ――確かにBCNランキング上期データではソニー、松下電器産業に続いて3位ですね。

芦澤
 下期はとりあえず2位確保を目標にしておりますが、7月28日に発表、8月中旬から順次市場に投入している新製品は、4.3メガピクセルCCDを搭載した最上位モデル「IXY DV M5」、2メガクラスでは世界最小・最軽量の「IXY DV SI」、当社としては初のDVDビデオカメラである「DC20/10」の3シリーズ4モデルです。すでにテレビコマーシャルや新聞広告は始めていますが、イメージキャラクターに女子テニスプレーヤーで人気抜群のマリア・シャラポアさんを起用、「ダブルOK」を訴求しています。ダブルというのは、静止画も動画もOKという意味を込めています。

 ――フォトプリンタもまだ新しいジャンルですね。

芦澤
 デジカメの写真を簡単にプリントしたいというニーズに応えた製品で、市場規模はまだ小さいですが、急成長過程にあります。SELPHY(セルフィー)ブランドで展開していますが、今回、昇華型で「SELPHY CP710」と「CP510」、インクジェットで「DS810」を投入しました。昇華型とインクジェットでは、画質に微妙な違いがあるんです。好きな方を選んでいただけるように両方を揃えました。

■ハイアマ向けデジタル一眼が大反響

――デジカメは。

芦澤
 コンパクトでは、2.5型の大型液晶モデルとして、7.1メガピクセルCCD、光学3倍ズーム搭載の最上位モデル「IXY DIGITAL 700」と、5.0メガピクセルで光学3倍ズームのシリーズ中核モデル「同60」を9月中旬にかけて発売します。また、プロ用としては、EOS-1D MarkIIN」を9月下旬に発売します。

 新しい路線としては、ハイアマチュア向けをうたった「EOS 5D」も発表しましたが、じつはこれがものすごい反響なんです。実売価格は37万8000円を想定しており、10月上旬に発売しますが、高額にもかかわらず「これこそ待ち望んでいた一眼デジタルだ」との声を多数いただいており、急きょ増産体制に入っています。日本は写真大国といわれてきましたが、本当に目の肥えたユーザーが育っていると改めて実感しているところです。

■プリンタ、シェアより市場拡大策

――プリンタ、特に複合機はどうなさるんですか。

芦澤
 年末商戦直前に出しますよ。期待してもらって良い意欲作です。

 ――上期のBCNランキングを見てますと、プリンタ総合計ではセイコーエプソンに0.1ポイントの差をつけられ2位になってますね。

芦澤
 プリンタについていいますと、そうシェアにこだわる時代ではなくなったなと思っています。

 ――おや、一頃とずいぶん物言いが違ってきましたね。

芦澤
 私どもは決してシェア絶対主義ではないんですよ。営業目標としては必要なんで、号令はかけてますがね。プリンタの場合、両社を合わせると90%近いシェアになるわけで、これからの課題は、さらに市場を大きくするにはどうしたらいいかというテーマの方が大きい。協力しあえるところは協力してデジタルフォト市場の拡大に取り組む時期に入ったなと考えています。
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