石井克美のデジタル家電ナビ

<石井克美のデジタル家電ナビ>29.携帯電話でテレビを見る

2005/10/31 16:51

週刊BCN 2005年10月31日vol.1111掲載

 「携帯電話でテレビが見られる」──。あえていうまでもなく、現状では地上アナログ放送のみの受信ということでサービスが行われている。ただし、携帯電話のテレビを利用した印象は、「映りが悪くて見づらい」、「電波受信が弱すぎる」、「バッテリーのもちが短すぎる」などといった視聴品質に対する不満の声が大多数を占めている。そうした事情が「地上デジタル放送」の受信が可能になることで一変するのだ。

 放送事業者や受信機メーカーで構成される地上デジタル放送推進協議会が、さる9月27日、携帯電話やカーナビゲーションシステムといった移動体通信端末で地上デジタルテレビ放送を受信できるサービス「ワンセグ」を発表した。

 会場となったフジテレビジョンでは、撮影したデータを同局内で「1セグメント放送用」にエンコードし、東京タワーを介しデータ配信を行った。そのデータをNTTドコモなどの対応試作機で受信。映像、音声ともまったく途切れることなく再生された。携帯電話のモニタで被写体となった人の表情が克明に読みとれるほど鮮明な画像が映し出されていたのが印象に残った。従来のサービスから確実にステップアップしているのが一目瞭然なのだ。

 ところで、この「ワンセグ」とは一体どのようなものなのか。通常、地上デジタル放送用の6メガヘルツの帯域は13のセグメントに分けられている。これらをいくつかに束ねることで、映像や音声、データを送信している。たとえば、ハイビジョン放送の場合には12セグメントが必要だとされている。今回の携帯電話向けの「ワンセグ」は1セグメントのみを使用した新サービスだ。この方式が採用できたのには、携帯電話の特性が大きく関わっている。ワンセグのビットレートは約312kbps、画素数はQVGAである。高解像度、高ビットレートを必要としていないのだ。

 しかしながら、先述したように、鮮明な画質が確保されている。これには、コーデックに「MPEG4AVC」と呼ばれる「H.264」を使用しているため。DVD並みの画質を保ちながら、MPEG2の2倍以上の圧縮率を持つ最新技術なのだ。

 「ワンセグ」放送の特徴は、映像、音声の配信に加え、データ放送の表示ができること。テレビ番組と同時に、データの表示を行い、そこから携帯電話向けサイトにリンクする、など様々な利用法が検討されているという。この放送は首都圏と中京、近畿の16局のほか、全国29局が参加するという。
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