店頭流通

ショップブランド、BTOパソコン 多様化するニーズで成長路線を維持

2005/12/12 16:51

週刊BCN 2005年12月12日vol.1117掲載

 コンシューマ向けパソコン市場で、AV機能搭載を追い風に大手メーカーが好調に推移するなかで、ショップオリジナルパソコンやBTOパソコンが売り上げを伸ばしている。パソコンの基本的機能を求める場合やAV機能は必要ないという買い替え・買い増しユーザーをしっかりと獲得。ユーザーニーズの多様化によるショップブランドやBTOのユーザー拡大は今後、ますます顕著となりそうだ。

 今年11月のBCNランキングによるパソコンのテレビ機能付き製品の台数構成比は、デスクトップでは60.9%、ノートでは14.8%。デスクトップでは60%強がテレビ機能付きを購入している結果となり、テレビ機能が付加されていない製品がついに40%を割り込んだ。しかし、BCNランキングがナショナルブランド中心の販売データであることを考慮すると、テレビ機能を搭載していないパソコンの需要がショップオリジナルパソコンやBTOパソコンへと流れていることを裏付ける数字と考えることもできる。

 ソフマップでは、「店頭に並ぶ商品ではカバーしきれないニーズを拾い上げる」(大西順也商品本部商品開発部部長)ことを狙いに、オリジナルパソコンのラインアップ強化を進めている。

 オリジナルパソコンやBTOパソコン市場では、すでにゲーム機能に特化した製品があるように、「目的ごとに買いやすい選択肢を揃えていく」考えだ。その目的ごとの選択肢のなかに、AV機能が付いた低価格のパソコンを出していくことも視野に入れている。ソフマップがこのほど発売した携帯電話をキーボードとして使える〝携帯対応パソコン〟も携帯電話の入力になれている若年層を開拓するための差別化戦略。新たなユーザー掘り起しにもつながる。

 ユーザーニーズの多様化が追い風になっているのはBTOメーカーだ。MCJのユーザー調査では、初心者ユーザーが同社の製品を使う率は10%以下。購入者の90%以上が2台目以降の購入だという。すでにユーザーはパソコン購入履歴があるためスキルが上がっており、自分に合ったパコソンを購入したいという傾向にある。消費者が買い替え・買い増しの選択肢にBTOを加えるという方向性は自然のことである。

 MCJは、単体のBTOパソコン事業で「今年度(06年3月期)売上高は前年同期比20%近く増加する」(小松永門上席執行役員営業統括本部本部長)と見込んでいる。また、グループ全体では、イーヤマの営業権譲渡によりモニターを加えることで、パソコン、パーツまで一貫した販売体制が整う。MCJグループ合算値では「国内中堅パソコンメーカーレベルに匹敵する615億円規模になる」見込みだ。

 エプソンダイレクトでは、「店頭モデルでは標準となっているAV機能をBTOで選択できるようにした」(岩倉義雄WEB営業部 WEB営業推進グループ課長)。BTOパソコンの強みは、ニーズに沿って欲しいものを提供していくこと。テレビ機能を付加するかどうかは、ユーザーが選べばいいわけだ。スリムコンパクトでAV機能を付加できる「エンデバーMRシリーズ」と「NT6000」シリーズは、前年同期比50%増に拡大。今年の同社のパソコン販売のなかで最も好調に推移した。

 AV機能を求めているニーズが確実にあるなかで自分の購入条件に合致したパソコンを追求したいという傾向もBTO需要を後押ししている。

 ショップブランドやBTOパソコンにとっては、その時どきのニーズに柔軟に対応できる体制が強み。パソコンユーザーの高度化と、ニーズの多様化が今後の成長に引き続き寄与することが期待できそうだ。 (田澤理恵●取材/文)
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