臨界点

クレオ 常務執行役員兼製品・サービス開発統括部長 大森俊樹

2006/01/09 18:45

週刊BCN 2006年01月09日vol.1120掲載

 パソコンユーザーのほとんどが活用する「はがき作成ソフト」は、人気商品であると同時に、一方で市場は成熟しつつある。しかし、クレオの大森俊樹・常務執行役員は、「市場のパイはまだあるはず」と言い切る。 トップシェアを維持するクレオが取り組んでいるのは、はがき作成ソフトの枠を越えた新しいサービスの提供だ。「ユーザーの利便性を追求する」ことで新市場の創出につなげる。 佐相彰彦/文 馬場磨貴/写真

はがき作成ソフトの枠を越えて新しいサービスで市場はまだ広がる

 ――冬商戦向けに発売した、はがき作成ソフト「筆まめVer・16」は、販売開始から圧倒的なシェアを維持しているが、05年10-12月の販売本数は。

 「約50万本で前年と同程度に売れている。増収とまではいかないが、05年は市場の状況を見極めて出荷本数を抑えた。これがコスト削減の効果につながり、利益に関しては前年同期を上回る見通しだ」


 ――06年の見通しは。

 「筆まめの購入者は、約6割がリピーターで、少しずつだが、年を追うごとに増えている。はがき作成ソフトはパソコンユーザーのほとんどが活用している。そうした意味では、市場が大幅に拡大することは難しい。しかし、リピーターは毎年新しいバージョンを購入する傾向が強い。06年も、前年並みを維持できる」

 ――他の競合製品との差別化ポイントは。

 「はがき作成ソフトという枠を越え、ユーザーのライフスタイルに合った機能を搭載することだ。筆まめの住所録機能は年賀状の作成だけに活用されているわけではない。会社員の場合は取引先のデータ管理に利用していることが多い。05年冬商戦向けに発売した製品は、個人情報保護の観点からデータのコピーや住所録ファイルの移動などを制限する『管理者パスワード』機能を追加した。また、住所録機能から地図情報を呼び出すなど、ほかのソフトと連携することで生活に便利なソフトと認めてもらうことが重要だ」

 ――ユーザーの利便性という点では、パッケージソフトとインターネットを連動させたサービスの将来性が高いのでは。

 「その通りだ。今後は、パッケージソフトとインターネットを連携させたサービス提供が欠かせない。新しいサービスとしては、コンビニエンスストアのセブン-イレブン・ジャパンが始めた年賀状印刷サービスに筆まめが対応している。筆まめで作成した年賀状の宛名と文面デザインを自宅のパソコンからインターネットで注文し、近くの『セブン-イレブン』で受け取れるというものだ。こうした新しいサービスを提供していけば、市場のパイを広げることができると確信している」

 ――ヤフーとの提携の進捗状況は。

 「現段階は、マーケットPRを中心に行っている。ヤフーの知名度と当社のソフト開発力を生かして、どのような新しいサービスが実現できるかというノウハウを蓄積している。手始めに、はがき作成ソフト『筆まめ』にヤフーの検索エンジンが使用できるツールバー機能を搭載した。両社のノウハウを生かしたサービスを提供できるようになれば、ユーザーにとってはもっと便利になるはずだ」

 ――提携のメリットは出始めているのか。

 「ヤフーはマーケットで圧倒的な存在感を持っている。協力してサービスを手がけるなかで、当社が見えなかったものが見えてくるようになった。1つは、モバイルサービスだ。これは、筆まめの『住所録機能』を応用し、インターネットサービス『筆まめBBサービス』を通じて、携帯電話のなかにあるアドレス帳など個人データのバックアップとセキュリティ保護を提供するものだ。モバイルやインターネットを切り口としたサービスを提供するうえでは提携した意味は大きいといえる」

DATA FILE
■王者クレオをアイフォーが追う

 はがき作成ソフト市場は、クレオがトップシェアに君臨している。しかし、2位のアイフォーが迫り、冬商戦は白熱したシェア争いが繰り広げられた。

 BCNランキングによれば、各メーカーが冬商戦向けソフトの販売を開始した9月12-18日は、メーカー別販売本数シェアでクレオが59.3%、アイフォーが22.9%。この時点では、35ポイント以上の差がつき、冬商戦はクレオの独壇場になる可能性が高かった。しかし、週を追うごとにアイフォーが巻き返しを図り、販売のピークを迎えた12月12-18日にはクレオが39.7%、アイフォーが35.1%と差が縮まっている。

 アイフォーの製品は、アップグレード版よりも通常版のほうが売れている。通常版を購入する需要は、そのメーカーのソフトを初めて購入するケースが多い。そのため、アイフォーは新規購入者を増やしている可能性が高い。

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