秋葉原は今

<秋葉原は今>12.顧客本位の商品やサービスを追求

2006/02/13 16:51

週刊BCN 2006年02月13日vol.1125掲載

 石丸電気は、秋葉原電気街の店舗を全面的に再編することで業績を伸ばしていく体制を整えた。これまで秋葉原地区の売上比率は総売上高の50%前後で推移してきた。これを、「06年度(07年3月期)には60%まで引き上げる」(辻村周一・営業本部販売企画部部長)としている。

 しかも、同社は電気街の各店舗を専門店化したことに合わせ、仕入担当者が販売スタッフを兼務するモデルの構築にも踏み切った。商品カテゴリーを白物家電、AV(音響・映像)、情報通信関連、ソフト、ゲームなどに分類。情報通信関連の仕入担当者が「パソコン本館」で販売を担当することや、家電の仕入担当者が「本店」の販売も行うといったことに取り組んでいる。「欲しい商品を選ぶのは、最終的にはお客さんになる」ためだ。「現場でお客さんの声を聞き、そのニーズに合った商品を仕入れて販売することは、『石丸電気に行けば欲しい商品が手に入る』とお客さんが認識するようになり、リピーターを確保することにもつながる」との考えからだ。加えて、「仕入れた商品は購入者が確実に1人はいるという点では過剰在庫を防ぐことにもつながるのではないか」ともくろむ。店舗の品揃えが豊富であることを売り物にしてきた同社が、専門店並みの知識と商品を持つことは、「量販店と専門店双方の良さを兼ね揃えることになる」と自信をのぞかせる。

 しかし、1人の社員が仕入と販売を兼務するのは、各店舗によって異なる商材を販売する可能性が高く、結果として大量仕入ができないために他社との価格競争に勝てないリスクも出てくる。「価格競争に関しては、競合他社が密集する秋葉原では当たり前のこと。同じ商品であれば、安い価格で対抗していく」という。テレビやパソコンなどの販売で利益が取れない場合は、「配送やトラブル時の対応などサポートサービスで利益を確保している」。サポートサービスビジネスについては、グループ会社のアイアイテクノサービスが手がけており、商品の日時指定配送や大型家電の設置、パソコンの初期設定など、さまざまなメニューを用意した。

 今年度は、昨年の店舗再編による臨時休業などがあったため、「売り上げが前年度を下回る見通し」という。しかし、「利益率に関しては前年度と比べ2-3ポイントは増える」と見込む。“電気街の王者”である石丸電気が、昨年から店舗の業態変更や組織の再編などを抜本的に断行しているのは、街の変貌が急速に進んでいることを象徴しているともいえる。(佐相彰彦)
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