店頭流通

デジタル家電 ネット販売でも大型テレビが好調 液晶は32型の高額モデルが売れ筋に

2006/03/13 16:51

週刊BCN 2006年03月13日vol.1129掲載

 デジタル家電のインターネット販売が好調な動きを見せている。ネット通販が一般的になり、消費者のネットに対する抵抗感が薄れてきたことで、高価格な大画面テレビなどの販売が本格化している。

 東芝は、「今年度(2006年3月期)下期からDVDレコーダーのネット流通を強化する」(小林浩・デジタルメディアネットワーク社映像営業事業部DAV国内営業部企画担当主務)との方針を打ち出した。デジタル家電については、家電量販店など既存販売チャネルが主流で、「これまでネットでの販売はあまり重要視していなかった」というが、同社の直販サイトも好調なうえ、アマゾンなどのECサイトでの販売が拡大していることに対応して、ネット販売に注力していく。

 ソニー製品のECサイト「ソニースタイル」でも昨年10月ごろからテレビやDVDレコーダーなどの販売が拡大しているという。テレビは、バイオやネットワークウォークマンなどのようにネット専用のオリジナルモデルはなく、店頭と同じ製品を販売しているが、消費者がネットや店頭で商品を比較検討して購入している傾向がうかがえるという。

 ECサイト企業の場合も同様に、DVDレコーダーなどのデジタル家電を有望な商材と位置づける。アマゾンジャパンは、昨年11月に以前の約4倍規模の新物流センターを開設したことで、大型商品の在庫を確保できる体制を整えた。供給体制の強化で、デジタル家電関連製品の販売が順調に伸びている。「高額なデジタル家電をネットで購入することに消費者の抵抗感がなくなってきたのではないか」(前田宏・エレクトロニクス商品部門部門長)と最近の傾向を分析する。

 同社が集計している1月1日-11月30日までの「Amazon.co.jp」のベストセラーによると、04年のエレクトロニクスストアのトップ10には、「iPod」シリーズなどの携帯オーディオ、電子辞書、ノートパソコン、デジタルカメラなどがランクインし、小型製品がトップ10のほとんどを占めていた。しかし、05年は、5位までを「iPod」シリーズが占めて同部門をけん引する人気商品となっているが、7位に東芝のHDD&DVDレコーダーがランクイン。東芝の「RD─X5 600GB」をはじめとした大容量HDD搭載のDVDレコーダーの販売量が拡大した。

 さらに、05年は、32型を超える液晶テレビやプラズマテレビなどの大型商品を強化したことで、薄型テレビについては、「32型の大画面クラスが売れ筋の主流」となった。低価格のベンチャーブランドよりも、「シャープやソニーを中心に国産大手メーカーの商品が思った以上に売れている」という。

 機能別でも、「ハイビジョン対応の高額モデルが伸びる傾向にあり、画面サイズはさらに37型へシフトする」勢いだ。

 パソコン関連製品では、「日本ヒューレット・パッカードやマウスコンピューター、マックなどが売れ筋」で店頭とは異なる傾向にあるが、薄型テレビの場合は、店頭での売れ筋がそのままネットにも反映しているようだ。

 また、「PC─Success」を運営するサクセスでも大型テレビの売り上げが拡大しているという。同社の場合はパソコン関連製品のユーザーが多いだけに、シャープや松下電器産業の大手メーカーの製品のほか、価格動向に詳しいユーザーなどにはバイ・デザインなどの低価格商品も人気だ。

 ネットで高額のテレビやDVDレコーダーが売れるようになってきた背景には、消費者自身がネットでの商品購入に慣れて、信頼感や安心感、便利さを実感し始めてきたという要因が大きい。価格比較サイト「価格.com」を運営するカカクコムによると、家電製品のコンテンツ利用者数は、04年12月の18.4%から05年12月には21.1%に拡大。04年はパソコン関連の利用者が全体のトップだったが、05年は逆転し、家電が全体のトップとなっている。

 ネット通販が一般消費者に身近になったことで、ネットへの警戒感が払拭されてきているのは確実だろう。サクセスの場合、全体的に平日の受注が多いが、家電製品に限れば日曜日の受注が多く、アマゾンのエレクトロニクス製品も週末の受注が多いという。

 以前は、店頭で実物を見て購入するのが当たり前だった高額のデジタル家電だが、ネットで価格や商品情報を検索し、最終的に購入する際に、店頭とネットのどちらも選択肢として視野に入れる傾向が高まっている。
  • 1