臨界点

日本AMD 取締役 吉沢俊介

2006/03/27 18:45

週刊BCN 2006年03月27日vol.1131掲載

 デュアルコアCPUを市場に投入し、着実に業績を伸ばしている日本AMD。国内CPU市場のマーケットシェアについて、吉沢俊介・取締役は「今のテクノロジーがあれば、50%獲得は堅い」と言い切る。昨年末には、サーバーベンダーとの連携を図る新組織の設立、今年に入ってからは代理店向けの販売促進プログラムを策定するなど、国内シェアを引き上げる強化策を着々と打っている。 佐相彰彦/文 ミワタダシ/写真

他社にないテクノロジーを武器に マーケットシェア50%を狙う

 ――06年に入り、CPU販売の感触は。

 「かなり優位性を出していけるようになった。パソコンの自作ユーザーやホワイトボックスを展開する量販店にビジネスチャンスを提供できるようになったと自負している。一番の強みは、デュアルコアCPUを持っていることだ。他社の製品と比較し、当社製品のほうが圧倒的にパフォーマンスが高い。しかも、消費電力当たりの性能の高さを表す『ワット性能』も優れているため、省エネルギーであることも強みだ。パフォーマンスと消費電力の点などで妥協しない製品を市場に投入したことにより、個人や中小企業での需要が増えると確信している」


 ――代理店への販売支援強化については。

 「今年3月1日から、販売代理店向けに『AMDソリューションプロイバイダプログラム(SPP)』を開始した。SPPは、個人のユーザーに対して、AMDプロセッサを搭載したパソコンなどを販売するショップやリセラーを対象に、さまざまな販売促進のサポートを行うというものだ。個人向けを対象とする販売代理店に対して、本格的なプログラムを適用するのは、今回が初めてとなる。米国では9か月ほど前に開始しており、店頭販売シェアに占めるAMDシステムの割合や売上規模に応じて代理店を『プラチナム』、『ゴールド』、『メンバー』の3段階に分けている。日本は、まず手厚いサポートを提供する『プラチナム』を開始しており、徐々に広げていく予定だ。現段階では『プラチナム』のパートナーは数社程度の獲得にとどまっているが、最終的には全体で100社ほどのパートナーを確保することを目標にしている」

 ――国内の個人向けパーツビジネスが厳しい状況との声をショップから聞くが。

 「米国では、ホワイトボックスなどノーブランドのパソコン市場が50%を占めている。日本では現段階で10%程度だが、ユーザーは余計なものが付いていないパソコンを求める傾向にある。そのため、今後は買い替えの際に自作パソコンが増えるとみられる。また、耐久性が高くリーズナブルなサーバーはないかという問い合わせがくるショップが増えていると聞く。これまでは、サーバー向けCPUをショップで販売するケースは少なかったが、中小企業の顧客を増やすという点では、秋葉原などのショップにサーバー向けCPUを卸すということも考えられる」

 ――個人市場での具体的なマーケットシェアの目標は。

 「他社にはないテクノロジーを強みにすれば、近い将来50%のシェアを獲得してもおかしくはない」

 ――デュアルコアCPUの強みは。

 「中小企業にとっては、コストメリットが大きい。中小企業は、オフィスサイズの関係上、サーバー構築スペースを大きく取れないことが多い。一方で、サーバーは増強しなければならない。こうした企業に対し、デュアルコアCPUの利点を訴えている。サーバーベンダーなどと連携し、当社製CPU活用のソリューションを共同で提案する『ディベロップメント・ビジネス・エンタープライズ(DBE)』を組織化したことで、差別化がはっきりしているCPUに関しては中小企業を中心にシステム案件を増やせるようになった。法人向けビジネスは今年度の売り上げを前年度の1.5倍まで引き上げる」

DATA FILE
■金額ベースで堅調な動き

 CPUの店頭販売で、日本AMDが金額ベースで前年比増を続けている。BCNランキングでは、今年2月が台数で前年同月比6%減、金額で同57%増になっている。

 同社の製品で売れているのは、「アスロン64 3200+」や「アスロン64X2 3800+」など。2月のアイテム別販売台数シェアで「3200+」が7.2%で2位、「X23800+」が5.4%で3位につけている。なかでも、「アスロン64X2」はデュアルコア対応という点で、パソコンマニアなど上級者層に人気を博しているようだ。

 市場では、インテルがシェア70%弱を確保、トップに君臨し続けているが、前年同月比でみると厳しい状況で、2月は台数で前年同月比24%減、金額は10%減だった。

 日本AMDが順調な動きを示していることから、シェアが変わる可能性もある。

  • 1