臨界点

コレガ 加藤 彰社長

2006/04/17 18:45

週刊BCN 2006年04月17日vol.1134掲載

 コレガがKVM切替器の開発でこだわっているのは高品質の追求だ。加藤彰社長は、「個人向けKVM切替器市場は立ち上がったばかり。安定性や耐久性、信頼性を訴えることが需要増につながる」と強調する。現段階では、KVM切替器の需要増に向け、家電量販店やパソコン専門店でのコーナー強化を含めた他社とのアライアンスを模索。情報関連機器とAV(音響・映像)機器の融合が進みつつあるなか、将来的にはパソコンとデジタル家電の切り替えが可能な製品の市場投入も視野に入れる。 佐相彰彦/文 馬場磨貴/写真

高品質製品の追求でKVM切替器の需要増へ

 ――KVM切替器の今年度(06年12月期)販売見通しは。

 「KVM切替器は個人・法人ともに需要が増えている。追い風を受け、最低でも前年度比15%増の13万台を見込んでいる」


 ――需要増の理由は。

 「個人向け市場では、パソコンユーザーが便利な製品と認めつつあるためだ。ユーザーは、文章や画像、音楽など保存データの増大やインターネットゲームの利用者増、低価格化パソコンの登場などで、目的別にパソコンを購入する傾向が高まっている。古いパソコンに貴重なデータを保存しているため捨てられないケースもある。買い増しユーザーのなかには、1組のモニタとキーボード、マウスによる複数台のパソコン操作を求めているため、KVM切替器を購入しているわけだ。また、これまではCPUやマザーボード、自分に合ったソフトウェアの搭載など1台のカスタマイズが主流だった。しかし、複数台の所有でシステムとしてカスタマイズするようになってきた。個人ユーザーのパソコンに対する考え方が変わってきていることも、販売増に寄与している」

 ――市場の拡大とともに新規参入ベンダーも増えている。他社との差別化策は。

 「品質だ。安定性や信頼性、耐久性、使いやすさなどを追求している。市場は賑わっているが、製品はピンからキリまである。現段階ではユーザーは安い製品を購入する傾向があるのは確かだ。低価格を武器にするメーカーもある。しかし、〝安かろう、悪かろう〟ではユーザーは購入しなくなる。価格競争は常に続くため、開発コストの削減によるリーズナブルな製品の発売は追求していく。しかし、安さにこだわるつもりはない。品質については、他社には絶対負けないようにする」

 ――KVM切替器市場の拡大で、ほかの周辺機器市場が拡大する可能性はあるか。

 「液晶モニタが売れていると聞く。見やすい、疲れにくいなど、画面にこだわるユーザーが多いためだ。また、パソコンを買い替えることをためらうユーザーであっても、買い増しならデータ保存が楽にできると考える可能性があるため、KVM切替器の普及とともにパソコンの販売増にもつながるのではないか」

 ――家電量販店やパソコン専門店などでの販売促進策は。

 「KVM切替器を核に実現できるパソコンライフを展開したい。そのためには、パソコンメーカーなど他社との協業が重要になってくる。今後は、さまざまなベンダーとのアライアンスを模索する。スイッチ1つでパソコンの切り替えが可能という簡便性をアピールできるようなデモコーナーを各ショップに設置し、パソコン需要の増加とともにKVM切替器の購入者も増えるといったサイクルを構築していきたい」

 ――次のステップは。

 「デジタル放送の普及で、テレビとパソコンの垣根がなくなるといえる。そのため、近い将来にはテレビの切り替えも可能な製品を模索している。また、スイッチでの切り替えではなく、リモート操作のニーズも出てくるだろう。実際、法人市場ではサーバーをリモート監視する傾向が高まっている。そのため、あるベンダーと、複数OSの切り替えの検証を行っている。夏から秋口にかけて、製品とサービスを含めたシステム提供を計画している」

DATA FILE
■コレガ、2位に大差つけ独走

 KVM切替器の店頭販売は、トップのコレガが独走している。3月27-4月2日のメーカー別販売台数シェアでは30.2%を獲得。2位のサンワサプライが18.8%だったため、11.4ポイントの差がついた。

 コレガの売れ筋製品は「CG-PC2KVMS」。3月27-4月2日の機種別台数シェアでは8.7%を獲得し、4週連続でトップをキープしている。同製品は、ケーブル型でパソコン2台の切り替えが可能で、平均売価が3000円弱。形状と価格ともに手軽である点がユーザーの支持を得ているとみられる。

 最近では、パソコンの買い増しユーザーの増大とともに、1台の画面で複数台を操作するニーズが徐々に増え、KVM切替器の店頭販売が堅調に伸びているようだ。市場が拡大傾向にあるため、メーカーの新規参入も多い。現段階はコレガが首位を維持しているが、シェア争奪戦が激化する可能性もある。

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