臨界点

シャープ 情報通信事業本部 パーソナル&ホームメディア事業部 副事業部長 長谷川 実

2006/05/01 18:45

週刊BCN 2006年05月01日vol.1136掲載

 電子辞書市場は現在、ユーザーの多くが高校生や中高年が占めているという。シェア2位のシャープは、ユーザー拡大と買い替え需要を促す起爆剤として、カラー液晶モデルを強化していく方針だ。これにより、辞書に加えてビューワーとしての使い方を新たな付加価値として位置づけ、差別化を図っていく。 田澤理恵/文 ミワタダシ/写真

07年度末に全体の半分をカラー液晶へ 電子辞書の利用シーンを拡大

 ――店頭の電子辞書売り場が賑わっている。市場は伸びているのか。

 「市場全体では、2004年度に前年比16.7%増に拡大し、05年度は台数ベースで前年比2%減、金額では0.2%増だった。購入者は高校生がメインで、次いで年配者が多い。大学入試センター試験で英語のリスニングテストが必須になったことを背景に、店頭でスピーカー付きの展示台を用意して、音声機能モデルの訴求強化を図っている。ここ数年、新入学シーズンに占めるウエートが高くなっている。昨年3月の伸びが高かったこともあり、今年はやや落ち着いていたとの感触がある」


 ――今年度はどうか。

 「市場全体では、台数ベースでは横ばいとみているが、金額ベースの伸び率は高まるだろう。当社も市場と同じ程度の伸びを見込んでいる」

 ――その理由は。

 「音声対応モデルなどの高付加価値モデルの買い替え需要を見込んでいるからだ。当社も全機種のうちの約半分が対応しており、今後も必要に応じて音声機能の搭載率を高めていく。さらに、業界で唯一発売しているカラー液晶モデルを今後は徐々に増やしていく。高付加価値モデルの拡充によって販売金額の伸びが期待できる」

 ――カラーへのニーズは高いのか。

 「携帯電話の画面がモノクロからカラーへ切り替わったように、画面はカラーにシフトするという流れがある。当然ながら、カラーのほうが見やすいためだ。現在は、全ラインアップ18機種のうち2機種にとどまっているが、07年度末をめどに全体の半分の機種をカラーにする計画だ。カラー液晶を強みにユーザーの幅を広げるとともに、買い替え需要を促したい」

 ――カラー液晶の強みをどのように訴求するのか。

 「カラーの強みは、ビューワーとしての使い方も提案できるということだ。SDカードに保存してある画像を見たり、電子書籍としても利用できる。最近は企業のセキュリティ強化により、ノートパソコンが持ち出せないケースが増えているため、パソコンの辞書機能を使っているビジネスマンを取り込むチャンスでもある。辞書機能に加えて画像やテキストデータ、電子書籍のビューワーもビジネスマンへのアピールポイントになる」

 ――カラー液晶以外の強みは。

 「話題のコンテンツをいち早く搭載することに取り組んでいる。家庭の医学や薬の辞典などをいち早く取り入れてきた。『脳を鍛える大人の計算ドリル』を搭載している機種もある。中高年のユーザーが多いだけに、ボケ防止への興味を抱く層と合致すると考えた。また、高校生向けの1部機種ではリスニング機能はもちろんのこと、語彙力判定機能を搭載し、レベルチェックができる。そのほか、MP3プレーヤーを搭載しているため、本体のコンテンツ以外でも学習に生かすことができる。これらは他社にはない強みだ」

 ――今後、シェア拡大のためにどんな製品を出していくのか。

 「今後は、カラー液晶モデルの拡大に力を入れていく。また、単に調べるだけではなく、自分のレベルを確かめる能力判定機能を採用したモデルを増やしていく。ただ、辞書から外れてしまうと電子辞書でなくなってしまうため、辞書の機能を基本に能力判定のような新たなコンテンツの搭載に力を入れていく方針だ」

DATA FILE
■首位カシオ追い上げに力

 電子辞書市場は、カシオ計算機が50%前後のシェアを確保し、首位をキープしている。シャープは、25-30%で推移しており、首位のカシオを追いあげる。3-4位のセイコーインスツルとキヤノンのシェアはそれぞれ10%弱となっている。

 最大の商戦期は3-4月の新入学シーズンで、購入者は高校生を軸とした学生と中高年層がメイン。昨年10月から今年3月までの販売台数推移をみると、今年3月の販売台数は10月の約1.5倍となっている。そのほか「クリスマスプレゼントとして買う人も多い」など、12-1月の年末年始の販売量も伸びている。

 ここ数年、店頭では電子辞書の売り場面積が拡大し、各社の製品が所狭しと並んでいる。最近のトレンドとしては、音声機能搭載モデルが販売台数の半数を超え、発音機能のニーズが高い。

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