店頭流通

コダック デュアルや広角レンズを強みに デジカメの差別化戦略を本格化

2006/06/12 18:45

週刊BCN 2006年06月12日vol.1141掲載

 コダック(小島佑介社長)はコンパクトタイプのデジタルカメラで、競合他社と一線を画した差別化戦略を展開する。新機軸の製品「V570」の投入によって、現在のトレンドである手ブレ補正や高画素とは違う特徴を出し、写真上級者ユーザーを獲得。今後は、上級者を中心とした特定のユーザーのほかに若年層にもすそ野を広げていく考えだ。

 コダックは今年2月に、デュアルレンズや23ミリ広角レンズ、3枚の写真をカメラ本体でパノラマ画像にできるなど特徴ある機能を搭載した「Kodak EasyShare V570 デュアルレンズ デジタルカメラ」を発売した。同製品の投入は、「差別化戦略の第一歩」(三好徹デジタル&フィルムイメージングシステムズ事業部デジタルビジネス本部キャプチャープロダクトマーケティングマネージャー)と捉えている。

 当初見込んでいたターゲット層であるデジカメ上級者の獲得に成功し、市場での差別化戦略の足がかりとなっただけでなく、「発売後5か月で値崩れを起こさずに、特定のユーザーを獲得している」など、「V570」の市場投入は「成功だった」と、立ち上がりに満足している。

 デジカメ市場は、高画素、手ブレ補正機能を軸に各社の熾烈なシェア争いが続いている。コダックのシェアは現在0.5%で12位(BCNランキング5月22-28日)。この激戦のなかで、シェア上位のメーカーと同様の製品コンセプトを打ち出してまともにぶつかるのを避け、「競合他社とは違うベクトル」で差別化していく方針だ。

 「V570」は、写真撮影を趣味にしている団塊世代や高所得者などのニッチ市場を狙って投入した商品。実際の購入者層もターゲット通り、写真に詳しいユーザーが多いが、当初見込んでいた年齢層よりも若い「30代前半から40代半ばの男性」が中心となっている。 大学や写真専門学校の学生を対象に行ったリサーチによって「価格は高いが、機能やデザイン性に興味を持った学生が多かった」という結果を得たことなどから、今後は若年層の獲得も狙う。「V570」をコンパクトデジカメの上位機種に位置づけて今後ランアップを拡充していく方針だ。

 現在「V570」の店頭実売価格は4万5000円弱で、デジカメ市場の売れ筋機種の中心価格帯3-4万円と比べると若干高額。しかし、価格の問題をクリアすれば、若年層にも受け入れられるほか、「トレンドセッターとしても期待」が高いため、普及拡大が見込めるとみている。

 三好マネージャーは、「人々が写真に興味を持つきっかけは、広角や望遠の魅力に気がついた瞬間が多い」という。「V570」は、広角の世界を提案するほか、「手ブレ補正は搭載していないが、23ミリ単焦点レンズのためシャッターボタンを半押ししてピントを合わせる必要がない」という特徴もあるため、初心者にもアプローチしたいと考えている。また、PCレスで写真プリントができる昇華型小型プリンタ「プリンタードック」も発売しており、デジカメ本体のほか、プリンタと組み合わせた提案も強化していく考えだ。

 同社は、「V570」でデュアルレンズを搭載するなど、銀塩カメラでは実現できなかったデジタルならではの新しい写真の楽しみ方を提案できたと考えている。

 デジカメ市場は普及拡大し、買い替え、買い増し需要が中心。これらの需要を獲得するために、写真の楽しさを伝える訴求を強化し、拡販を図っていく方針だ。
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