大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>4.NECのパソコン赤字決算が示す構造的な欠陥?

2006/06/19 18:44

週刊BCN 2006年06月19日vol.1142掲載

 NECが発表した2005年度連結決算によると、パソコン事業をはじめとするパーソナルソリューション事業は、売上高が前年比3.5%増の7495億円だが、営業損益は前年比140億円減のマイナス70億円と、赤字に転落した。

 パーソナルソリューション事業は、パソコンとBIGLOBEで構成されるが、売上高のほとんどをパソコンが占めるため、この赤字は、まさにパソコン事業によるものだといっていい。

 同社の05年度パソコン出荷台数は、上期が前年同期比7.6%増の141万台、下期が同4.9%増の149万台。通期でも前年比6.2%増の290万台と前年実績を上回っている。売上高、出荷台数ともに、前年を上回っているにもかかわらず赤字という内容だ。

■円安の進展で業績悪化に

 財務部門を担当するNECの的井保夫取締役執行役員専務は、「急激な円安による資材費の増加、価格競争の激化などが影響した」と、赤字化の要因を語る。

 なかでも、第3四半期の急激な為替変動が、同事業の収支バランスを崩したという。

 年末商戦を含む第3四半期は、すでに9月時点で、仕入れ価格を前提にした新製品の価格設定を行い、それをベースとして販売店と商談を行う。つまり9月時点で、だいたいの製品価格が決定するといってもいい。

 だが、第3四半期は、短期間に円が約10円近くも振れた。1ドル110円台前半で見積もっていたものが、120円前後の円安にまで進展したため、9月の価格設定時と比べて、実際の調達価格が大きく狂った。部材コストの7割をドル建ての取引が占めるといわれるパソコンの場合、円安の急速な進展はマイナス要素に働く。この為替変動が、収益悪化につながったというのが同社の見解なのだ。

 「急激な為替変動といった環境変化への対応力が劣っていたこと、また、スピード力不足が原因。パソコン事業の反省点はそこにある」と的井取締役執行役員専務は説明する。

■為替変動だけが要因なのか

 しかし、本当にそれだけが原因なのだろうか。

 同社によると、上期のパソコン事業の収益はほぼイーブン。そして、為替変動を受けた第3四半期に40億円の赤字を計上したという。通期の決算で70億円の赤字に拡大していることから逆算すれば、第4四半期には約30億円の赤字を計上したことになる。

 第4四半期は、第3四半期ほどの急激な為替変動がなかったにもかかわらず、引き続き赤字体質のままなのである。さらに、06年度の業績予想でも、通期で30億円の赤字と発表し、2年連続の赤字になると見ているのだ。

 「パソコン事業の黒字転換は下期から」と的井取締役執行役員専務は言うが、これも逆算すれば、上期だけで30億円を超える赤字が想定されるというわけだ。

 為替変動の影響というには、赤字化が長期化している。NECのパソコン事業は、どこかに大きな欠陥があると言わざるを得ないのではないだろうか。

 07年には、PC─9801の発売から25周年を迎える。NEC創立100周年をリストラのまっただ中で迎えた形とは異なり、四半世紀の節目は明るく迎えてほしい。
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