店頭流通

日本HP、デル 個人向けPC強化の背景は ネット生かした独自の販売を模索

2006/06/26 18:45

週刊BCN 2006年06月26日vol.1143掲載

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の「HP Pavilion(パビリオン)」再開、デルの「XPS」シリーズ強化と、外資系大手メーカーが相次いでコンシューマ市場に乗り出した。ネットビジネスモデルの確立を背景に、コンシューマ市場で新しい展開を模索する両社の狙いを探った。

 日本HPは4年ぶりにコンシューマ向けPCブランド「パビリオン」を再開、6月2日から個人向け販売を開始した。

 販売を中止していたコンシューマ市場に本腰を入れ始めたのは、EC市場の拡大により、ネット直販モデルが個人に受け入れられる土壌が整ったからだと説明する。販売ルートは、自社サイト「HP Directplus」経由による直販のみ。

 個人ユーザーに認知を広げるためには、「実機を見られる場を作ることも検討課題」(山下淳一・日本HP・パーソナルシステムズ事業統括・モバイルビジネス本部本部長)としているが、当面はサイトでの販売に絞る。

 02年の旧コンパックとの合併後、法人市場に特化してきたのは、「個人需要は、マーケットサイズでみても魅力的だが、国内メーカーの強豪が多いなど、継続的に収益を上げるのは厳しい」と判断したためだ。

 それだけに、今回の再参入では、インターネットによるマーケティング手法など、顧客とダイレクトコミュニケーションを図ることで効率的にターゲット層の囲い込みを狙う。商品も今回発売した「パビリオン」シリーズは、ノートパソコンのみ。「ノートは、デスクトップよりも販売実績が高く、売り慣れている」というのが理由だ。

 パビリオンの日本市場での発売は、「満を持しての投入」と自信を示す一方で、「この半年で継続的に投資して、ビジネスサイズを拡大できるか、つかみたい」と慎重な姿勢も見せている。

 一方、デルはパソコン事業拡大のために約2年前からコンシューマ向け製品の強化を図っており、「日本市場に合った製品の強化」(郡 信一郎・デル・クライアント製品マーケティング本部本部長)に取り組んできた。同社の売り上げに占めるコンシューマ向け製品の比重は約2割。

 5月末から個人向けブランド「Dimension(ディメンション)」のなかに位置づけていた上位モデル「ディメンションXPS」を、新たに「XPS」シリーズとして独立させた。ラインアップの4モデルは、20万円弱から40万円前後とハイエンドクラスの価格帯。しかも、ゲーム機に特化した製品や、キーボードの着脱が可能なノートパソコンなど、趣味性の強いモデルを揃えた。低価格で量販を狙うというよりは、付加価値に出費を惜しまないヘビーユーザー層に的を絞った。

 同社によれば、新製品は「既存コンシューマの1-2割をターゲットとする」プレミアム製品で、売上全体への貢献度は低いという。しかし、パソコン市場が成熟するなかで、特化した機能を求めるハイエンドユーザーの買い換えや買い増し需要に応えようというのが、今回の新ブランド立ち上げの狙いだ。販売見通しについては、「新しい製品を投入したからといって、急にシェアが拡大するとは思っていない」と冷静な姿勢をみせる。

 今後の展開については、日本HPの山下本部長も、「想定している販売目標を年内で達成できるか」によって方向性を見極めるという。

 両社ともコンシューマ市場に対して、慎重に臨みながらも、ネットのビジネスモデルを生かして新しい個人ユーザーの取り込みを模索し始めたといえそうだ。
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