大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>6.三洋電機の復活シナリオに黄色信号

2006/07/03 18:44

週刊BCN 2006年07月03日vol.1144掲載

 三洋電機が、フィンランドのノキアと進めていたCDMA2000方式の携帯電話事業における合弁会社設立が白紙に戻った。

 2年連続で連結赤字を計上した三洋電機にとって、携帯電話事業は復活に向けた柱のひとつであり、2006年度の業績回復に向けても、黄色信号が灯ったといわざるを得ない。

■他社との提携にも慎重な姿勢

 06年度の連結業績見通しは、売上高が前年比0.1%増の2兆4000億円、営業利益は前年度のマイナス171億円から黒字転換し650億円を計画。当期純利益は05年度のマイナス2056億円から200億円と、こちらも最終黒字を目指す。

 だが、この数字には、最初からノキアとの提携効果は含まれていなかった。

 最初から白紙に戻ることを想定したとは考えられないが、それでも、経営陣がこの提携に慎重な姿勢を見せていたことは間違いない。この合弁会社設立の白紙化で、開発や調達面において、世界最大規模を誇るノキアの力を活用するシナリオが崩れたのは確かである。

 さらに、もうひとつ、06年度見通しの数字には含まれていないものがある。

 それは、テレビ事業において、台湾クオンタ・コンピュータと合意しているフラットテレビの合弁会社設立に伴う売上計上だ。井植敏雅社長は、「この提携によって投入する製品は、なんとか今年の年末商戦には間に合わせたい。そのためには、8月、9月頃には動き出さなければ、年末には商品を打ち込めない」と、今年夏にも具体的な新会社がスタートする計画であることを示唆する。

 三洋電機が打ち出した06年度のテレビ部門の売上見通しは、238億円減の863億円。「これは、これまでの延長線上で事業を進めていたらこうなる、という数字だと考えてほしい」と井植社長は語る。つまり、クオンタとの提携によって投入される薄型テレビの分が、そのまま新たな売上分として上乗せを期待できるわけだ。

 ただ、これも裏を返せば、ノキアとの合弁同様、その提携に慎重な姿勢を見せているともいえる。

■業績回復に不透明感増す

 全社的には、昨年来、野中ともよ会長が打ち出したThink GAIAを具現化した製品が徐々に登場しているものの、同社の業績を回復させるまでの原動力とはなり得ていない。また、昨年度策定した中期経営計画「SANYO EVOLUTION PROJECT」は、1年間で約4200億円の有利子負債を削減し、3か年での達成を目標としていた1万4000人の人員削減も、わずか1年で達成。さらに、株主資本比率も05年9月末の6.6%から18.7%に回復することで財務体質を強化するなどの成果があがっているが、まだ後向きともいえるリストラ効果でしかない。

 井植社長は、「2005年度で過去を引きずる体質とは決別したつもりだ。本当の意味でスタートを切れる体制ができた」と、復活に向けた準備が整ったと強調するが、クオンタの合弁効果が、どれだけ貢献するか、まだ読み切れない部分があり、加えて、提携に伴う新たな追加投資などがあるようだと、利益へのマイナス影響も懸念される。
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