臨界点

シマンテック コンシューマ営業統括本部 執行役員統括本部長 大岩憲三

2006/07/03 18:45

週刊BCN 2006年07月03日vol.1144掲載

 参入企業が相次ぐなか、セキュリティソフトで圧倒的な強さを示すシマンテック。コンシューマ事業トップの大岩憲三・統括本部長は、旧ベリタスソフトウェアとの合併でさらに存在感を示せると自負する。旧両社の融合は、一般消費者にどんなメリットをもらたすのか。キーワードは「安全」と「安心」だという。 木村剛士 取材/文 清水タケシ 写真

キーワードは「安全・安心」 今秋から新サービス「Genesis」開始

 ――大岩本部長は、4月1日付で従来の法人市場から一般消費者向け事業のトップに就いた。まず何に着手したか。

 「強みの確認と理解だ。ベリタスソフトウェアとの合併により、事業領域が広がった。2社の強みを融合し一般消費者にどのようなメリットを提供できるのかを再度確認・理解する必要があった」

 ――合併後のシマンテックは、何が変わったのか。

 「『安全』と『安心』の両方を提供できる会社に変化した。安全の提供は、シマンテックがもとから強みとしているセキュリティ関連の製品・サービスがある。もう一方の安心については、旧ベリタスのAvailability(可用性)製品がカバーしてきた。この2カテゴリの製品・サービスを高い品質レベルで揃えている会社はそうはない」

 ――一般消費者のニーズは何だと捉えているか。

 「信用情報流出の危険性や、フィッシングなどインターネット上の脅威は非常に多様化してきている。ウイルスの侵入を防げばそれで万全というわけではなくなった。金銭詐取目的の攻撃も増え、ユーザーは従来以上にインターネット利用に不安を抱いている。これらの脅威を複雑な操作・設定をすることなく解消してもらいたいと一般消費者は願っているはずだ」

 ――今秋、新たな展開として日本で新サービス「Genesis(ジェネシス=コードネーム)」を始める。

 「すべてのセキュリティ機能をサービスとして提供する。『Norton Internet Security』が持つ機能に加え、オンライン取引とデジタルコンテンツの保護、バックアップやPCの最適化機能を、インターネットにつながった時点でほぼすべて自動的に施せる。旧両社の技術が組み合わさったからこそできるサービスで、安全・安心の提供を具現化した」

 ――既存製品との棲み分けはどうなる。

 「既存のソフト『Nortonシリーズ』は、細かな設定などカスタマイズ性に優れている。一方、ジェネシスはほぼ自動で、ユーザーに手間をかけさせないメリットがある。ジェネシスは初心者向け、Nortonシリーズは上級者向けと位置づけて、両方とも販売に力を入れていく」

 ――来年にはマイクロソフトが同様のサービスを日本国内でも開始する予定だ。

 「脅威には感じていない。むしろ、セキュリティの重要性を浸透させてくれ、市場の活性化につながると思っている。プラス材料だ」

 ――「BCN AWARD」のセキュリティソフト部門最優秀賞を5年連続で獲得している。今年の業績目標は。

 「ナンバーワンであり続けることが至上命題だ。加えて、トップを獲っているとはいえ、日本のシェアは海外よりも低い。まずは海外の水準まで高めることが目標だ」

 ――複数ある販売チャネルのなかで、どの流通経路を重視するのか。

 「特定の販売チャネルを強化するつもりはない。顧客の購入方法は分散化している。店頭、ウェブサイトからのダウンロード、PCへのバンドル、ネット接続サービスとのセット販売の4つすべてが大切だ」

DATA FILE
■5年連続トップの座を堅持

 セキュリティソフト部門でシマンテックは圧倒的な強さを示している。BCNランキングでは、2001年から05年までの5年間、年間販売本数および金額は一貫してトップ。昨年は中国最大手のキングソフトが日本市場に参入し、1年間の利用限定で100万を無償配布するなどの施策があったが、それでも大幅にシェアが落ちることはなかった。今年に入ってからも好調で、直近の週(6月12日-18日)でも、本数で46.4%、金額で54.0%を獲得する。

 今年7月6日には、ソースネクストが2年目以降からの更新費用無料の製品を販売する。また、マイクロソフトがセキュリティサービス事業に本格参入するなど、競合企業との争いが今後ますます熾烈になる。攻勢をかけるライバルに負けずに、この強さをどこまで維持するか。下期以降は今以上に厳しい市場環境となりそうだが、上期はシェアトップをほぼ確実にしている。

  • 1