大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>9.新経営体制から1年、ソニーの復活ぶりは…

2006/07/24 18:44

週刊BCN 2006年07月24日vol.1147掲載

 ソニーが、ハワード・ストリンガー会長兼CEO、中鉢良治社長兼エレクトロニクスCEOの二人三脚体制にシフトして、1年が経過した。

 この1年、ソニーが取り組んできたのは、構造改革、収益改善、そして成長戦略の実行だった。また、エレクトロニクス事業においては、「顧客視点」「技術」「現場力」を改革のポイントとしてきた。ストリンガー会長は、「構造改革で設定したマイルストーンに対しては、20億ドル分のコスト削減をはじめ、人員整理、不採算部門の再編、生産拠点の統廃合などの成果を出せたと認識している」と自己評価する。

 中鉢社長も、「2007年度目標である連結営業利益率5%、エレクロトニクス事業の営業利益率4%に対して、05年度中にやらなくてはならないことはすべてやった」と、この1年を振り返る。

■テレビ事業がソニー復活のカギ

 だが、ソニーの完全回復と言い切るには時期尚早だ。実際、「道半ば」という言葉も、2人のトップは口にする。

 中鉢社長は、「テレビ事業の回復なくして、エレクトロニクス事業の復活はない」と語り、さらに「エレクトロニクス事業の復活なくして、ソニーの復活はない」とも続ける。つまり、テレビ事業の回復が、そのままソニー復活の原動力になるという図式だ。

 そのテレビ事業は、昨年の年末商戦で一応の成果を出した。新ブランド「BRAVIA」を全世界で展開。「開発、生産、営業、マーケティングのあらゆる活動においてテレビを最優先とし、収益性改善に取り組んだ」結果だ。特に、ソニーブランドが高い評価を維持し続けている北米市場への投資を優先。これによって、全世界の薄型テレビ市場でトップシェアを奪還するというシナリオは、これまでのソニーらしからぬ一点突破の手法ともいえた。

■瞬間風速を潮流に変えられるか

 ただ、テレビ事業も依然赤字のままでは評価できる段階にない。激戦区である国内37-40インチの市場で、低価格戦略を打ち出している実態をみれば、収益を後回しにしてでも、シェア獲得を優先している焦りともみえる。

 また、テレビ事業の回復だけでは、ソニー復活にはつながらないのは誰の目にも明らかだ。

 その点を察して、中鉢社長も最近は論調を変え、「テレビ、ビデオ、オーディオ、デジタルイメージを加えた4部門のそれぞれが回復感を出すことが復活の必須条件」と言い始めている。

 ビデオは、ハイビジョンハンディカムの成功を土台に、今後はブルーレイ戦略の舵取りが課題。デジタルイメージングは、サイバーショットのシェア回復とともに、コニカミノルタから買収した一眼レフカメラ事業の立ち上げが課題だ。そして、最大の難関ともいえるオーディオでは、やはり携帯オーディオが最大の壁。BCNランキングの6月期データで、ウォークマンEシリーズが20%台のシェアを奪還したとはいえ、「瞬間風速」の域を出ない。これを年間を通じた「潮流」に変えることができるかがカギを握る。

 ソニーは、復活に向けた土台がようやく整いつつある段階にしかない。経営陣の自己評価とは裏腹に、むしろ、これからが本番だ。
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