大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>11.Windowsでみえた改善すべき業界の姿勢

2006/08/07 16:51

週刊BCN 2006年08月07日vol.1149掲載

 なぜ、PC業界は、この問題にもっと積極的に触れようとしないのだろうか。

 マイクロソフトのWindowsのサポート期間の問題である。世間では、7月11日にWindows98/98SE/Meのサポートが終了したことばかりが注目されているが、むしろ問題はWindows XP Home Editionのサポート期間のほうである。

■短すぎるサポートと告知の欠如

 マイクロソフトが2004年6月に新たに策定した「製品ライフサイクルガイドライン」によると、個人向けOSのサポート終了期間は、発売から2年後となっている。

 つまり、これに当てはめれば、次期OSであるWindows Vistaの発売から2年後にはXP Home Editionのサポート期間が終了することになる。

 マイクロソフトの公式発表では、Vistaの発売時期は来年1月以降とされている。つまり現行OSであるXP Home Edition搭載のPCをいま購入したユーザーは、約2年半後にはサポートが打ち切られることになるのだ。

 個人ユーザーの間にもブロードバンドが広がり、ウイルスやワームといった脅威と隣り合わせ。それが2年半後には、マイクロソフトから修正パッチが配布されなくなり、常に脅威と直面しなくてはならない環境での使用を余儀なくされる。日進月歩ならぬ、秒進分歩と呼ばれるPCとはいえ、やはりこの2年半というサポート期間は短いといわざるを得ない。

 そして、さらに問題なのが、この事実を知っていながら、PC業界がこの告知に消極的なことだ。

 マイクロソフトは、自社サイトのサポート関連ページで、製品ライフサイクルガイドラインを示すことで、その仕組みに言及しているが、初心者が明確に分かるような説明とはなっていない。ましてや、多くのユーザーがサポートサイトまで訪れるとは考えにくく、告知の効果はほとんどないといっていい。マイクロソフトは、トップページでしっかりとこの事実を伝えるべきだろう。また、PCメーカーも、自社のサイトでは、この事実を明記していない。

 そして、販売店も同様に購入者に対して説明を行っているとは考えにくい。この事実を知らないまま、XP Home Editionを販売している店員もいるだろう。

■顧客ありきで正直な体質に

 ではなぜ、PC業界はこれだけ告知に消極的なのか。

 ひとつには、マイクロソフトがサポート期間を延長してくれるのではないかというメーカー、販売店の期待があることだ。かつてのWindows98/98SE/Meでも当初は、04年1月に打ち切るはずだったサポート期間を、今年7月まで延長した経緯がある。同じことが起こるのであれば、むやみに告知してユーザーの混乱を招く必要がないとの判断だ。

 もうひとつは、Vista発売前の買い控えを助長するような手は打ちたくないというものだ。XP Home Editionのサポート期間が約2年半とすれば、ただでさえVistaの発売延期で目玉をなくしたPC業界にとっては、自分の首を締めることになりかねない。

 だが、これでは、あまりにも顧客不在の体質だといわざるを得ない。PC業界は、もっと正直にならなくてはいけない。

  • 1