臨界点

マカフィー コンシューマ事業本部 事業本部長 中山泰宏

2006/09/11 18:45

週刊BCN 2006年09月11日vol.1153掲載

 マカフィーが一般消費者向け市場に再参入してから10月で3年が経つ。セキュリティソフト大手の同社は店頭での販売シェアこそ低いものの、PCメーカーやISPとの提携で着実に実績を積み上げ、400万ユーザーの獲得も目前だ。ただ、OSメーカーの参入、トップメーカーの新サービス開始、更新費用無料ソフトの登場など競合他社との争いは強まる一方だ。どこで差別化し勝ち残るか。 木村剛士 取材/文 大星直輝 写真

08年、個人市場で30%のシェア獲得 ISPやバンドルなど多様な販路で勝負

 ――再参入からもうすぐ3年になる。これまでの実績は。

 「家電量販店など店頭での販売シェアは決して高くないが順調だ。現在は、昨年度比60%増で伸びているし、トライアル(無償体験)版を含めたユーザーはもうすぐ400万人に達する。店頭での販売に加えPCバンドル、ISP経由での販売を含めたマーケットシェアは、民間調査会社の調べでは、13-14%というデータもある」

 ――目標とするシェアは。

 「08年までに個人市場で30%のシェアを獲る。これは店頭販売だけではなく、他のチャネルも含めた総体での数値。店頭のみの目標はとくに定めていない。今年の市場は、前年比10%以上で伸びると予測している。2台以上のPCを持つ家庭も増え、2台目、3台目用に購入するケースも多い。市場環境は悪くない。実現は十分可能だ」

 ――店頭よりは他の販売チャネルを重要視している印象もあるが。

 「そんなことはない。確かに、店頭でのパッケージ販売によるユーザーは2割程度で、残りの8割はISPのネット接続サービスとのセット販売やPCバンドル、ダウンロード販売で獲得している。ただ、店頭で購入するユーザーも多いし、店頭で売ることは知名度向上、ブランド力アップにもつながる。非常に重要なチャネルだ。一般消費者の購入方法は多様化している。マカフィーはすべてのチャネルを重要視している」

 ――市場環境は良いというが、マイクロソフトが来年参入予定だ。脅威ではないのか。

 「脅威ではある。ただ、マイクロソフトはOSメーカーだけに、OSの脆弱性を突く攻撃防御など、OSを守ることを主眼におくだろう。インターネット利用やPCの脅威は複合的であり、すべてに対応できるかは不透明だ。マカフィーは、セキュリティソフト専業メーカーとして経営資源を集中している。考えられるすべての脅威からPCやインターネット利用を守れる。総合力と実績、品質で勝負する」

 ――一方で、ソースネクストの更新費用0円のモデルがヒットしている。

 「正直言えば、更新費用が必要ないというコンセプトがこれほど評価されるとは考えていなかった。多少驚いている。ただ、マカフィーとしては、定義ファイルの更新頻度などの品質の高さ、サポート体制の充実など、価格ではない訴求ポイントで攻める」

 ――秋は各社一斉に新バージョンを発表する時期だが、マカフィーの新バージョンはどうなる。

 「9月下旬に発表する予定だ。詳細は話せないが、コンセプトは『個人情報を守る』。目玉になるのは『サイトアドバイザー』という機能で、スパイウェアに感染する恐れや詐欺行為をはたらく可能性があると判断したウェブサイトを検索結果画面で教えることができる。特許技術を用いた全く新しいテクノロジーを使っており、大きな差別化ポイントとなる」

Corporate PROFILE

 マカフィーは、米マカフィーの日本法人でセキュリティ製品・サービスの大手。一般消費者向け市場には2003年10月に再参入した。店頭シェアは最高で10%弱と決して高くはないが、ナショナルブランドメーカー製PCの大半にはマカフィー製ソフトがバンドルされている。また、80以上のISPがネット接続サービスのセキュリティサービスメニューとしてマカフィーの技術を採用している。PCのほか、携帯電話向けウイルスチェックサービスも提供している。

 パッケージは、豊富なラインアップを揃えているが、ウイルスやスパイウェア対策、個人情報保護、パーソナルファイアウォールなど複数の機能を包含したスイート製品が人気。全ユーザーの70%がこのスイート製品利用者だ。

 昨年10月にはパッケージカラーを赤から黒へと変更し、大々的なプロモーション施策を実施した。
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外部リンク

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