臨界点

デジタルアーツ 営業本部長 橋本晃久

2006/09/25 18:45

週刊BCN 2006年09月25日vol.1155掲載

 暴力やアダルトなど有害サイトへのアクセスを遮断するURLフィルタリングソフト。デジタルアーツはこの分野のソフトを開発する、数少ない国産ソフト会社だ。同社の一般消費者向け製品「i-フィルター」は、国内トップの販売実績を誇る。ほとんどの人がフィルタリングソフトの存在すら知らなかった時代からフィルタリング技術に経営資源を集中させてきたデジタルアーツは、市場が好転してきた今、何に力を注ぐのか。 木村剛士 取材/文 川崎ナナ 写真

増殖する有害サイトをシャットアウト PCだけでなくゲーム機などにも市場を広げる

 ――暴力やアダルトなど有害サイトが増加し、ネット上の書き込みがきっかけで殺人が起きたケースもある。URLフィルタリングソフトを求める家庭は増えているのか。

 「3年前、一般消費者向けURLフィルタリングソフト市場は、年率30%で伸びるという予測データが出ていた。だが、デジタルアーツの『i-フィルター』はそれ以上の伸びだ。前年度比倍々ゲームでここ数年成長している。ただ、普及率はまだ低すぎる。全国で今、18歳未満の子どもを持つ家庭は約1600万世帯。URLフィルタリングソフトはその1%にも入っていないだろう。これからの市場だ。政府は、『IT新改革戦略』のなかでURLフィルタリングソフトの導入を推進しており、家庭にも認知されつつある。市場環境は追い風だ。まずは1年以内にユーザーを3倍にする」

 ――市場環境がよければ競争も激しくなる。

 「URLフィルタリングソフトは、有害サイト情報を見つけ出し、その情報とユーザーがアクセスしたサイトをマッチングしてアクセスの許可を判別する。そのため、情報データベース(DB)の量とマッチングの質が重要になる。当社は両方とも競合に勝る。DBには約1億8000万ページの情報がある。情報収集には独自のロボットを使い、最終的には人が1つひとつのサイトをみて区分けする。そのための人員は21人揃えている。ウェブサイトの解析は言語に依存する部分が多く国産のほうが質は高い。競争が激しくなっても十分勝ち目はある」

 ――マーケットをどう広げていくか。

 「消費者がどこからでも購入できるように、多様な販売チャネルを構築する。PC向けでは店頭、ISP、PCバンドル、そしてダウンロードすべての販路で『i-フィルター』を購入できるようにすることが大事だ。PCバンドルでは松下電器産業以外の有名ブランドPCに対応しており、ISPでは127事業者と提携し『i-フィルター』の機能を提供している。チャネルはほぼ整いつつある。あとはどう必要性を訴えるかだ」

 ――最近ではウェブサイトを閲覧できる機器はPCだけにとどまらない。

 「確かにその通りだ。すでに対応に動いている。携帯ゲーム機では、ブラウザ機能付き『ニンテンドーDSシリーズ』に月額課金型のフィルタリングサービスを6月から提供を開始した。テレビなどデジタル家電についてもすでにビジネスに結びつけようとさまざまな方向性を探っている。ただ、携帯電話はビジネスとしてのメリットを現時点では感じていない」

 ――URLフィルタリングに経営資源を集中している。他ジャンルのソフトを開発し、販売するつもりはないのか。

 「計画中だ。詳細は話せないが来年の早い段階で違うラインアップのソフトをリリースする。個人と法人それぞれにアプローチできる製品だ。URLフィルタリングだけではないデジタルアーツの新しい顔を来年には披露する」

Corporate PROFILE

 デジタルアーツは1995年創業で、ほぼ一貫してURLフィルタリングソフトの開発に集中してきた。日本の自社開発会社として有数の存在で、国産ではデジタルアーツ以外ではネットスターなど数社しかない。法人と個人の両市場で「i-フィルター」シリーズを展開する。

 橋本晃久営業本部長は、日本IBM、富士通などの大手コンピュータメーカーのほか、オフショア開発ベンチャー企業で営業などを経験した。「国産のアプリケーション、ミドルウェア、特化した市場に向けた製品展開をする企業が伸びる」が持論で、2年前にデジタルアーツに入社した。
  • 1