大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>42.デジカメの争いは「撮った後」に

2007/03/26 16:51

週刊BCN 2007年03月26日vol.1180掲載

 一見、ビデオカメラや薄型テレビのCMかと見違える、デジタルカメラのCMが流れている。

 先頃、ソニーが投入したコンパクトデジタルカメラ、新「Cyber-Shot」のテレビCMである。

■“作品”づくりの楽しさを訴求

 これまでのデジカメの広告は、どれもが撮影する部分にフォーカスを当てたものだった。だからこそ、画素数や内蔵している画像処理エンジン、レンズ性能の説明に力を注ぎ、同時に簡単に撮影できることを示して見せた。

 だが、ソニーのこのCMは、撮影した後の楽しさを表現したものである。

 デジカメで撮影した結婚式のシーンを、複数の静止画を組み合わせて、ハイビジョンのスライドショーとして見せ、さらに、それに人気シンガーのアンジェラ・アキさんの音楽を組み合わせて、感動の作品へと仕上げている様子を実演して見せている。

 店頭展示でもそれは一緒だ。薄型テレビ「BRAVIA」をそのまま展示什器として使用し、デジカメで撮影した後には、大画面テレビで視聴する楽しさを訴えている。

 「ソニーが訴えたいのは、『見る楽しみ』『見せる楽しみ』の創造。これまで訴えてきた『撮る』機能との両輪によって、ソニーならではの提案をしたい」と、デジタルイメージング事業本部・石塚茂樹本部長は語る。

 16:9の画面サイズでの撮影モードを用意。テレビとの連動による「見る」提案をデジカメに加えるとともに、音楽との連動を前提とする編集機能をカメラそのものに追加。「音フォト」によって、デジカメからスライドショーに、簡単に音楽をつけることもできるようした。見るという新たな撮影後の提案を主軸に据えるのがソニーの戦略だ。

■他社も同様の戦略で臨む

 同様の提案は、松下電器産業でもみられる。LUMIXでは、マルチアスペクトを採用した機種を投入。ひと回り大きいCCDを採用することにより、16:9や4:3、3:2でも同じ画角での高画素記録を実現。プリントアウトの4:3への対応を図りながら、16:9の大画面薄型テレビにも高精細で表示することに成功した。

 松下電器は、LUMIX Linkの名称で、PCレスでコンパクトプリンタに印字ができるほか、薄型テレビ「VIERA」に映し出す「テレ写」、DVDレコーダー「DIGA」によってDVDメディアへ保存するリンク性をアピール。「写真を楽しむという観点から、AVメーカーならではのアイデアを今後も提案していく」(パナソニックマーケティング本部・平原重信副本部長)としている。

 カメラメーカーも工夫を凝らす。キヤノンは、プリンタメーカーの観点から、プリントアウトする楽しみを「ENJOY PHOTO」として提案。「今後は、単なる機器の機能競争から、デジタルフォトソリューションの世界へと進化することになる。入力機器から出力機器までを品揃えしている強みを生かし、写真講座やサークル活動を通じた利用提案にも力を注ぐ」(キヤノンマーケティングジャパン・村瀬治男社長)と機能プラスαで差別化を図る考えだ。 デジカメメーカーの戦いの舞台は、「撮った後」の提案に移行しているのは明らかだ。
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