大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>50.プラズマ陣営が仕掛ける動画解像度の優位性

2007/05/28 16:51

週刊BCN 2007年05月28日vol.1188掲載

 松下電器産業、日立製作所などのプラズマテレビ陣営が、画素数の議論に一石を投じようとしている。

 一般的に、薄型テレビにおいては、垂直方向650画素以上のハイビジョンテレビよりも、1920×1080のフルハイビジョンテレビのほうが高画質とされている。地上デジタル放送で配信される1440×1080iの映像を間引くことなく表示できるフルハイビジョンは、地デジには最適というのが店頭でのセールストークとなっている。

■画素数から動画解像度へ

 もちろん、それはそれで間違いではない。だが、テレビで表示されるのは、あくまでも動画。そうなると、単に「画素数が多ければ、高画質のテレビ視聴に最適である」という図式が成り立たなくなる。松下電器、日立が訴えようとしているのも、その点である。プラズマ陣営は、これを動画解像度という言葉を用いて表現する。

 動画解像度は、次世代PDP開発センターが定義した新たな解像度スペックの算定方法で、画面の端から端まで、画面がスクロールする動画スピードに応じて、人の目で識別できる表示の細かさを、本数として表すものだ。

 「1画面が5秒間に右から左にスクロールする際、ハイビジョン液晶における動画解像度は、300本で、フルハイビジョン液晶は600本の動画解像度となる。一方、プラズマテレビのハイビジョンが720本の動画解像度、フルハイビジョンに至っては900本の動画解像度を実現している」(日立製作所ユビキタスプラットフォームグループマーケティング事業部マーケティング本部・吉野正則担当本部長)と差異を語る。

 動画解像度という点では、フルハイビジョン液晶テレビよりも、一般のハイビジョンプラズマテレビのほうが上回るというのがプラズマ陣営の言い分なのだ。

■優位性の訴求ができるか

 一方、松下電器は、総合性能を強調する。

 「本来、薄型テレビは動画解像度のほかに高精細、視野角、階調性、寿命、色再現性、コントラストなどの要素が絡み合って評価されるべき。静止画ならばともかく、動画は数々の要素が絡み合って、その良さを実現できる。テレビの性能は、画素数だけで論じるのではなく、動画に必要とされる総合的な要素こそが大切」とし、「画素数だけの議論が先行していることは疑問」と異議を唱える。

 だが、問題はこれが店頭や一般ユーザーに浸透していくかどうかである。次世代PDP開発センターが定義した指標であることから、液晶陣営がこれを採用した表示をするとは考えにくいからだ。

 また、すでにシャープやソニー、松下電器、日立から投入されている液晶テレビが、倍速駆動と呼ばれる120Hz駆動のフルハイビジョンパネルを採用、応答性能を飛躍的に向上させていること、IPSアルファテクノロジが3倍速となる180Hz駆動の液晶パネルを先頃開催されたDisplay2007で参考展示するなど、液晶パネルの進化は、動画解像度でもプラズマテレビの圧倒的優位をそのままにしておかない状況にある。

 プラズマ陣営は、動画解像度をいかに浸透させることができるのか、その手法が注目されるといえよう。
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