大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>51.「悪かろう」からの脱却を図るソーテック

2007/06/04 18:44

週刊BCN 2007年06月04日vol.1189掲載

 ソーテックは、昨年11月から品質の信頼性を高める「J-MADE」方式を導入した。そして、5月下旬からは、J-MADEのステッカーを貼った機種を、台湾で生産しているノートPC1機種を除いて、すべての製品に展開。これらの製品を対象に、90日以内に初期不良が発生した場合には、同一あるいは同等製品と交換するサービスを開始した。

■メーカーの責任がとれる体制

 J-MADEとは、国内生産によるモノづくりを指すが、端的にいうならば、「国内自社生産」を意味する。

 ソーテックは創業以来、日本、台湾、韓国などのODMにPC生産を委託するファブレスメーカーであった。しかし、シャープ出身の山田健介社長は、2005年6月の就任以来、製造工程を持たないファブレスであることに対して、自ら疑問を投げかけてきた。

 「自分で製造せずに、品質に最終責任を持てるとは思えない」

 品質問題が発生した際には、メーカーが責任を持つのが当然。だが、ファブレスの場合、どうしても、製造したODMの責任だという考え方が頭をかすめることになる。これではメーカーとはいえないというのが山田社長の持論だ。だからこそ、ファブレスからの脱皮を目指してきたのだ。

 当初の計画は慎重だった。06年1月時点での山田社長のコメントは、当時2割程度だった国内自社生産比率を08年度までに全体の3分の1程度にまで引き上げるというものだった。

 だが、昨年後半からその計画を大きく転換し、一気に国内自社生産比率を引き上げた。

 「夏までは月産4000-5000台だったが、11月には1万5000-6000台の生産規模に拡充した」

■200億円を当面の目標に

 国内自社生産によって検査の質も変化した。ベアボーンを生産している海外拠点での全数検査に加え、国内での組立前後にも数々の検査を実施。さらに、出荷前に全数を対象に最終検査を行っている。「初期不良を見逃さない体制が整ったことで、品質の大幅な改善を達成した」という。

 また、「生産過程において、万が一何らかの問題が発生した際に、当社の社員が自身の目ですぐに確認を行い対策を施すというように、スピーディな対処が可能になる」というメリットも生み出している。

 このように「J-MADE」は、これまで同社に付けられていた「品質が悪い」というレッテルを剥がすための重点施策となる。その成果は徐々にあがりつつある。学習塾から1000台単位で受注を獲得。さらに、通信会社などから数百台単位で受注しはじめている点でもそれが証明されよう。

 この2年をかけて、メーカーとしての地盤を作り上げてきた結果がJ-MADEともいえるのだ。

 06年度の売上高は前年比19.2%減の159億円。「メーカーという立場を考えれば、最低でも200億円の規模がないと成り立たない」と山田社長が語るように、この事業規模では戦う体制が確立されているとはいいがたい。

 「07年度は、200億円が目標になる。その時点でようやくメーカーとしての成長戦略が描ける」。攻めの戦略がいよいよ顕在化することになりそうだ。
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