大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>54.ブランディング戦略で後れをとるレノボ

2007/06/25 18:44

週刊BCN 2007年06月25日vol.1192掲載

 先頃、調査会社ガートナーが発表した2007年第1四半期(1-3月)の世界PC出荷台数シェアによると、エイサーが6.8%を獲得して3位に浮上。代わってレノボは6.3%で、4位に順位を下げた。同じく調査会社IDCの調べでは、レノボは6.7%と3位を維持したものの、エイサーも6.7%と同率3位となった。

■「中国製だから」の低い評価

 世界市場で単独3位だったレノボのポジションは確実に落ちている。同様に、日本においてもレノボ・ジャパンの勢いがあるとはいえない。

 マニアックなユーザーからは、残念ながら「ThinkPadの品質が落ちた」という声すら聞こえてくる。量販店などに出向くことが多いレノボ・ジャパンの石田聡子執行役員も、「これは中国製だからやめたほうがいいという店頭での会話を聞いて、すごく残念な気持ちになった」と、自らの体験を明かす。そして、「われわれのメッセージが届いていないことを実感せざるを得なかった」と続ける。

 レノボは、全世界的にスポーツ分野におけるスポンサードを積極化している。世界最高峰のモータースポーツであるF1をはじめ、トリノオリンピックや全米バスケットボール協会(NBA)など。日本では、プロ野球の東京ヤクルトスワローズをスポンサードしている。もちろん、レノボというブランドの露出が狙いではあるが、それだけにとどまらないと石田執行役員は語る。F1ではアスファルトの反射が照りつける過酷な気温のなかでも利用でき、トリノでは零下にまで下がる厳しい環境でも利用できるPCであることなどを証明し、品質面での確かさを訴える狙いもある。

 にもかかわらず、「レノボの名前を聞いたことがあるという人は約6割。だが、品質の高いブランドとしては認知されていない」(石田執行役員)のが実情だ。

■試験公開で高品質をアピール

 レノボ・ジャパンは報道関係者を対象に大和研究所(神奈川県)で行われている製品保証試験の様子を公開した。内容は盛りだくさんだ。70度からマイナス40度までの過酷な状況下で実施される環境試験、ノートPC本体の動作時における騒音を測定する音響試験、ノートPCの電磁波を測定する電波試験、天板の開閉や加圧などを行う耐久試験、落下テストなどを行う振動・衝撃試験など、主要な試験を公開してみせた。

 「日本IBMが、ThinkPadの開発に使用していた試験設備は、ほとんどをレノボが買い取った。十分ともいえる研究開発施設を保有している」と、レノボ・ジャパンの横田聡一執行役員は語る。

 「良い製品を開発するには、優れたテスト施設と試験機をいかに開発し、保有できるかがカギになる。日本IBM時代から、顧客の利用シーンを理解し、故障やトラブルがどう起こるのかを再現する試験機を開発してきた。その姿勢は、レノボになったいまも変わらない」(横田執行役員)。

 レノボは、ブランディング戦略に後れがある。それは同社幹部も十分理解している。だからこそ、報道関係者にも試験施設を公開したのだろう。ブランドの浸透には、矢継ぎ早の施策と、継続的な取り組みが欠かせないことをレノボ自身がよく知っている。
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