大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>57.ソニー、松下の品質問題への対応姿勢

2007/07/16 18:44

週刊BCN 2007年07月16日vol.1195掲載

 6月末に相次いで開かれた松下電器産業、ソニーの株主総会では、いずれも品質問題が株主の関心事となった。

 松下電器は、FF式石油暖房機の回収に続き、冷蔵庫、乾燥機、電子レンジの3商品の回収を発表。ソニーはノートパソコン向けリチウムイオン電池の回収問題を抱えている。日本を代表する電機メーカーの相次ぐ品質問題に、株主が噛みついた格好だといえよう。

■品質専任役員を置くソニー

 株主総会でソニーの中鉢良治社長は、「品質問題をビジネスの最重要課題として位置づけ、信頼の維持に全力を尽くしていく」とコメントした。

 さらに、「メーカーは、品質、価格、供給の3つの観点から満足してもらえるように努力している。だが、ソニーのような会社が、この3つの要素を同列に並べていいのかという疑問もある。いまソニーは、品質を第1に考えることに全社をあげて取り組んでいる。品質専任の担当役員をアサインし、オペレーション上でも、不良品を入れない、作らない、出さないということに力を注いだ。社内にホットラインを設置し、お客様の声や不満などを製品設計にフィードバックする体制も強化した。全社をあげて、商品の最終品質の向上に取り組んでいる」と、海外メーカーとは異なるスタンスを打ち出す姿勢を見せた。

■耐用年数経過後を対策する松下

 一方、松下電器の大坪文雄社長は、「安全、品質はすべてに優先するという考え方を徹底し、世界で最もモノづくりに優れた企業を目指す」と株主総会で言及した。

 同社では、品質問題には大きく2つの観点があると説明する。1つは、初期品質である。工場出荷からある一定期間までの使用を対象とした品質のことであり、松下電器の大鶴英嗣取締役は、「初期品質については、改善されている」と断言する。問題はもう1つの品質である長期使用時の品質である。冷蔵庫、乾燥機、電子レンジの3商品の回収も、実は、10年から20年という長期使用において、部品や部材が劣化した状況で発生するものだ。

 「耐用年数が過ぎた場合、機能上の故障よりも、不安全のほうが先に出てしまうという問題がある。寿命末期に、どう安全にライフサイクルを終わらせるかを考えていく必要がある。当社では、安全問題に取り組む専門組織をドメインごとに設置すること、技術規格や安全基準を設計からライフエンドまでを捉えた形に拡大強化すること、ライフエンドにおいて安全に使命を果たすための設計回路を導入することに取り組んでいる」と大鶴取締役は説明する。

 品質の高いモノづくりは、長寿命化につながるが、これが逆に耐用年数を超えた時点での品質維持という、新たな問題を生み出している。だが、松下電器は、これにも真正面から取り組んでいく姿勢だ。

 パソコンについては、製品の物理的寿命よりも性能的寿命が先に訪れることがほとんどだ。それだけに、家電製品のような長期使用時の品質問題はあまり考慮しないで済むといえる。だが、そのノウハウをパソコンにも適用することは、品質によって世界と戦っている日本のメーカーにも、差異化策になるはずだ。
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