大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>62.シャープのコンビナート構想で進む系列化

2007/08/27 18:44

週刊BCN 2007年08月27日vol.1200掲載

 シャープが発表した大阪府堺市の液晶パネル新工場の建設計画(8/13・20号で既報)は、予想の範囲内だったといえる。第10世代のパネルサイズについて片山幹雄社長は「以前から決定していた」と発言したように、報道関係者、アナリストの間では、ほぼ公然の事実となっていた。

 しかし、建設計画ということになると、それは、予想をはるかに上回るものだった。

■川上から川下まで一貫生産

 建設計画は、液晶パネルの生産拠点に加えて、その生産に必要なインフラ関連施設や、部材、装置メーカーなどの工場群を集結。さらに、液晶で採用している薄膜技術をベースにした薄膜太陽電池の生産を発表し、世界最大規模の太陽電池工場を新たに建設するというものだ。

 片山社長は、「21世紀型コンビナートともいうべき、業種・業態を越えた最大級の工場群を形成する。全体では1兆円規模の投資になる」としており、液晶パネルの生産、および液晶/太陽電池のベース技術となる薄膜生産に関する、川上から川下までの一貫生産拠点が誕生することになる。

 すでに進出が発表されているのは、インフラを担う関西電力グループ、マザーガラス生産のコーニング、カラーフィルター生産の大日本印刷の3社。「21世紀型コンビナートでは、ガラス、カラーフィルター、装置、水、薬液、材料、リサイクルといった液晶パネルに関するあらゆる企業が進出することになる」という。

 これらインフラメーカー、部材メーカーの進出による投資は、全投資額の約半分を占める4000-5000億円に達するとみている。

 「進出する企業同士が共用可能なインフラも多く、産業全体として設備投資の抑制ができる。技術革新の進展、先端技術の流出防止にもつながる」と、片山社長はその狙いを語る。共同技術開発施設の設置や、梱包/開梱/物流といった作業の削減も可能になり、先端技術を搭載した製品を、短期間に低コストで開発することが可能になるというわけだ。

■連携がカギを握る

 シャープのこの動きは、自動車産業さながらのグループ化を促進することにもなるだろう。

 片山社長もその可能性を指摘。「将来的には、進出企業と資本提携といったことも考えられる」とする。

 液晶技術は、先端技術の塊であり、知財を共有しあい、競争力を高めることが求められる。それが促進されれば、特定メーカー同士の連携が、ますます進展することになるわけだ。

 となれば、コンビナート化の成否を握るのは、各社間の連携となる。体質が異なる企業同士がどこまで深く連携できるかが課題というわけだ。片山社長も、「21世紀型コンビナートの推進における懸念材料をあげるとすれば、各社を横断的にマネジメントできるかどうかになるだろう」と語る。

 「21世紀型のコンビナート構想は、手本になるものはひとつもない。自らすべてを開拓していかなくてはならない」と片山社長は続ける。

 シャープが、そのリーダーシップを取れるかどうかが、コンビナート構想の行方を左右することになるのは間違いない。
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