大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>63.北米市場で火花、次世代ディスク競争

2007/09/03 16:51

週刊BCN 2007年09月03日vol.1201掲載

 Blu-ray陣営とHD DVD陣営が、北米市場において熾烈な競争を繰り広げている。

■HD DVDは低価格戦略で先行

 東芝がHD DVDプレーヤーを299ドルの価格で販売。さらに、購入者を対象に3社から発売されている15種類のHD DVDタイトルのなかから5枚をプレゼントするプロモーションを開始した。

 もともと299ドルの価格は、第2世代モデルで、期間限定のプロモーションとして導入されていたもの。この時点でも、部材コストなどから逆算すれば赤字との指摘が業界筋では出ていたが、第3世代の製品では、この戦略的価格を通常の価格として設定した。

 第3世代に進化したとはいえ、299ドルでは依然として赤字のままとの指摘が支配的。さらに、5枚のディスク付きだから驚きだ。

 だが、この成果は着実にシェアに反映されている。今年4月に、499ドルから399ドルに価格を改定した時点で、北米市場におけるHD DVDプレーヤーの販売台数は、Blu-rayプレーヤーの約3倍に増加。また、5月に299ドルに引き下げたことで、さらに、その2倍の販売台数に達した。

 赤字覚悟の積極的な価格戦略で、次世代ディスクの主導権を握ろうというわけだ。

 加えて、パラマウントピクチャーズおよびドリームワークスアニメーションが、HD DVDの支持を表明。Blu-rayでのタイトル投入を行わないことを表明した。発売総タイトル数ではBlu-rayが上回っているなかで、この発表は、次世代ディスクにおけるハリウッドコンテンツの勢力図にも影響を及ぼすことになる。

■日本では様相が異なるが…

 だが、Blu-ray陣営も黙ってはいない。ソニーは499ドルのBlu-rayプレーヤーを販売、松下電器産業も599ドルの価格で追い打ちをかける。

 さらに、東芝に対抗すべく、Blu-ray陣営が共同でプロモーションを展開。ソニー、松下電器、フィリップス、パイオニア、サムスンおよびプレイステーション3を発売するソニー・コンピュータエンタテインメントの6社のいずれかのBlu-ray機器を購入すると、7社の映画会社から発売されている21タイトルのコンテンツから5タイトルをプレゼントするという対抗措置を打ち出した。

 また、ワーナーブラザーズが、話題の新作「300」で、Blu-rayでの販売比率を65%にすると発表。これも、Blu-ray陣営には追い風となっている。

 こうした戦略が功を奏して、6月後半からはBlu-ray陣営のシェアが回復。主導権争いはますます熾烈なものとなっている。

 米国では、次世代ディスクをプレーヤーとして活用する用途が中心となっており、価格競争が激しい。その点では、レコーダーが中心となる日本とは一線を画しており、米国の価格競争がそのまま日本に飛び火する可能性は低い。

 しかし、年末に向けて、東芝も戦略的な展開を打ち出してくることが予想されるほか、日本の店頭シェアで先行しているBlu-ray陣営も、9月から各社が新製品を発表、需要を加速させる考えだ。

 両陣営が「年末商戦が雌雄を決する大事な時期」と異口同音に語るなかで、その準備が最終段階に入ってきた。
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