大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>64.好調な売れ行き「LOOX U」の本当の挑戦

2007/09/10 18:44

週刊BCN 2007年09月10日vol.1202掲載

 富士通が6月に発売した「LOOX Uシリーズ」が相変わらず品薄だ。第1号機は、同社の直販サイトだけに販売を限定していたが、9月からの新製品では、店頭販売モデルも用意した。さらに、従来のWindows XPモデルに加えて、Windows Vistaを選択できるようにしたほか、筐体カラーを変更し、白から黒と青の2色を採用した。

 6月の発売と同時に同社直販サイトで募集を開始したモニター販売は、わずか数日で完売。さらに追加する形で用意したモニター製品もやはり完売。一般販売は、2か月待ちの状況が続き、富士通社内ではパソコン事業始まって以来の読み違いとの声もあがっているほどの人気ぶりだ。

■モバイルへのこだわりで開発

 売れ行き好調のLOOX Uは、インテルが提唱するUltra Mobile PC(UMPC)プラットフォーム2007にいち早く準拠した製品だ。

 171×133mmという手のひらサイズの筐体に、最薄部では26.5mmの薄さ、580gという軽量化を実現、同社が得意とする液晶回転型の仕組みを採用。QWERTY配列のキーボードと5.6インチの液晶モニターを搭載している。

 また、個人向けPCの07年夏モデルのなかでは唯一、WindowsXPを搭載していたのも、機能面のバランスを実現するという点で高い評価を得ている。13万9800円から、という価格設定も見逃せない。

 富士通では、「これまでにもOASYS POCKETやINTER TOPといったモバイルPCで実績を持つ当社が、世界一のモバイルPCづくりを目指したのが、LOOX U」だと位置づける。先進機能の搭載はもとより、生産を担当する島根富士通が開発段階から会議に参加し、量産時に発生するであろう課題を一つ一つ克服。専用ラインを構築し、細かい作業にはピンセットを使用するという工夫まで取り入れた。

 ノートPCの国内生産にこだわり続けてきた富士通が、そのノウハウを生かすことで、市場投入できた製品ともいえる。

■ユーザーの幅を広げられるか

 だが、LOOX Uの挑戦は、むしろこれからが本番だ。

 現在の購入の中心は、やはりパワーユーザーをはじめとするアーリーアダプター層。かつてのPDAやモバイルPC製品を購入した層と、ほぼ同じユーザー層が購入しているといってもいい。

 富士通はLOOX Uのターゲットを、こうしたパワーユーザー層だけにとどめようとはしていない。随所に、かなり広いユーザー層を意識した工夫が凝らされていることからもそれがわかる。

 例えば、筐体のサイズは女性が両手の親指を使ってキーボード操作ができることを意識している。また、キーボード部分を照らすために、LEDライトを装備したのも、単に暗いところでキーボードを操作するためという発想からではなく、就寝前に自分の部屋で寝転がりながらブログの更新作業を行うという具体的な使い方を想定したものだ。

 これらの点からも、一部の先進ユーザーが対象ではなく、一般ユーザーがターゲットであることがわかる。だからこそ、LOOX Uの挑戦はこれからなのだ。9月からの新製品の投入でLOOX Uの真価が問われることになる。
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