大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>66.従来と異なるデルの間接販売戦略

2007/09/24 18:44

週刊BCN 2007年09月24日vol.1204掲載

 デルが、ビックカメラと提携し、コンシューマPC領域において、間接販売に乗り出した。

 この取り組みは、同社がこれまで何度となく行ってきた間接販売とは意味合いが違う。

■店頭販売は世界戦略

 同社では、従来から、DELL REAL SITEの名称で、ショップ・イン・ショップの形態をとり、店頭においてデルブランドのPCの販売に取り組んできた。これは専門の販売員が対応するものの、発注はその場からネットで行い、後日、顧客の元に配送されるというものであり、直販の域を出ていなかった。

 だが、今回のビックカメラとの提携は、店が在庫を確保し、即日持ち帰りが可能になる。最終商品の在庫リスクを店が持つという点で明らかに仕組みが違うのだ。

 そして、もうひとつ従来と意味合いが違う理由がある。世界戦略のもとに推進されている点だ。

 これまでにも何度か参入しては撤退してきた店頭販売は、日本法人独自のものとして展開されていたが、今回の日本におけるビックカメラとの提携は、米国ではウォルマート、英国ではカーフォン・ウェアハウスといった販売店と提携したのと同じ戦略上で実施されたものだ。

 「デルにとって、米国、英国、日本は大変重要な市場。重要度の高い市場から、間接販売に乗り出していることの証し。短期的な施策ではなく、世界戦略に基づいた長期計画」というわけだ。

■在庫リスクは避けられない

 ではなぜ、新たに間接販売に乗り出したのか。

 ジム・メリット社長は、「デルが、直販モデルに限界を感じているわけではない。デルの価値を最も高めることができ、最も広範な顧客にリーチできる仕組みは直販だと考えている。売り上げの大半が直販である状況は今後も変わらない」とする一方、「コンシューマの多くは、実際に店頭に足を運んで、PCを購入するという事実がある。ここは、直販モデルだけではリーチできない。これを補完する仕組みが間接販売になる」と語る。この分野で国内5位のシェアを引き上げるためには間接販売は不可欠だ。

 当然、ビックカメラだけの提携では、デルが指摘するリーチできていない市場をすべてカバーすることはできない。

 この点に関してメリット社長は、「現時点では、ビックカメラ以外との提携は検討していない。いまは、提携を通じて、間接販売におけるノウハウを学んでいる段階であり、この関係を構築し、機能させることが最優先」とする一方、「長期的な視点でみれば、機能を確立した時点で、他社とのパートナーシップを模索する可能性は否定しない」とも語る。

 間接販売への取り組みは、コンシューマ分野だけではない。

 新ブランド「Vostro」を投入したSMB(中堅・中小企業)分野に関しても、今後、間接販売に乗り出す姿勢をみせている。

 間接販売の領域は、デルにとってホワイトスペース。拡大した分だけ、数字はそのまま上乗せされる。だが、在庫リスクを抱えざるを得ない見込み生産に踏み出すことで、舵取りは数段難しくなる。収益性にどう影響するかが注目される。
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