大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>76.PC業界の環境対策への取り組みは

2007/12/03 16:51

週刊BCN 2007年12月03日vol.1214掲載

 このところ、企業の環境対策はますます進展しているようだ。

 自動車産業では、トヨタ自動車、本田技研工業をはじめとする主要メーカーが数年前から環境対策に積極的に取り組んできたが、今年に入ってからは電機大手も環境対策を積極化。松下電器産業やシャープが、環境戦略に関する会見を開くなど、対外的にアピールする動きも顕著になってきた。

■機器の省電力化が進む

 コンピュータメーカーにとっても環境問題は避けては通れない。昨年来、AMDが提唱している「ワット性能」の指標に代表されるように、サーバーにおける省電力化をCPUメーカーやサーバーメーカーが強調。まずは、データセンターにおける省電力化によるメリットを積極的に訴求し始めた。

 先頃、コンテナ型データセンター「Project Blackbox」を日本で初公開したサン・マイクロシステムズの末次朝彦社長は、「現在、全世界でコンピュータを利用しているのは約15億人。だが、将来的には、60億人が利用する時代がくるはずだ。その際に問題となるのは、消費電力。低消費電力の環境を実現することが求められており、Blackboxのような考え方によって、これを打開できるだろう」とアピールする。

 PCにおいても、環境への取り組みは重要な課題となっている。

 すでに、PC業界でも環境配慮設計として、CPUによる消費電力の削減はもとより、化学物質の使用削減、マグネシウムやプラスチックの再生利用、生活環境に配慮した静音設計といった考え方を企画、開発段階から盛り込み、リサイクルおよびリユース時の解体、分離の容易性や、リユース部品の使用などにも取り組んでいる。あるメーカーでは、2005年度だけで1万300点のリユース部品を利用したという。

 また、リデュースでは、プリント基板の高密度実装化や、電源の小型化などが進展。デスクトップPCでは、この10年で質量が約52%削減された。ノートPCでは75%も削減することに成功している。

 PC業界が独自に設定しているPCグリーンラベルに準拠した製品は、06年度実績で約85%に達しており、今後、グリーンマークや、07年度省エネ法に準拠した形で、基準を強化していく考えだ。

■リサイクル手続きを簡単に

 だが、課題もある。例えば、回収リサイクル制度においては、ユーザー企業がPCを他社製品にリプレースした場合、現在の資源有効利用促進法では、新規に導入したメーカーが、これまで使用していた他社製品を回収、再資源化することはできない。これをメーカー系リサイクルルートへと着実につなげる仕組みづくりと、それに向けた規制緩和が必要だ。

 また、個人向けPCは、今年9月までに累計で105万6900台がリサイクルされているが、依然として、その手続きが複雑すぎるとの指摘がある。

 現時点では、廃棄時に回収再資源化料金を支払う必要があるPCがほとんどを占め、4年間で100万台を超える実績は業界でも予想を上回るものとしているが、年間700万台以上の個人向けPCが出荷されている現状を考えると、リサイクルをしやすくする仕組みをつくって、この台数を引き上げていく必要がある。
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