大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>78.三洋電機再建のカギ握る構造改革
2007/12/17 18:44
週刊BCN 2007年12月17日vol.1216掲載
「二次電池」「ソーラー」「電子部品」による部品事業領域と、「コマーシャル」「白物家電」「デジタル」の完成品事業領域に分割。戦略部門における集中的な投資と、全セグメントでの収益事業への転換を目指す。
■カンパニー制が不振の要因
部品事業においては、事業売却を断念した半導体事業での営業利益確保という課題が残るものの、世界トップシェアのリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッカド電池の強みが生かせるほか、今後大きな成長が期待できるハイブリッド自動車用二次電池(HEV)事業での先進性や、単位面積あたりの変換効率で世界ナンバーワンを誇るHIT太陽電池など、優位性を発揮できる領域が少なくない。
一方で、完成品事業においては、構造改革を含めた施策が不可欠だ。実際、佐野社長は次のように指摘する。
「この6か月間、社長として全体を見渡した結果、完成品事業がシュリンクしたのは、カンパニー制に問題があると確信した。技術リソースを持っていながらも、それを自らの目線で判断したために、きちんとマーケットインできていなかった」
同社では、「グローバル競争力の向上」「国内事業の効率化追求」「マーケティング・商品力強化」を重点戦略とし、10年度の国内完成品事業は07年度比で横ばいの3600億円とする一方、海外は07年度の3700億円から5700億円へと54%増を計画している。
■総合家電にはこだわらず
完成品事業の営業・マーケティング体制にも、佐野社長は本格的にメスを入れる考えだ。
海外においては販売責任を負う海外営業本部を新設。米国、欧州、中国、アジア、インド・中近東の主要販売地域には、本社役員クラスを常駐させる。
また、全社のマーケティング支援機能を集約するマーケティング本部を新設し、ここから一元化したマーケティング戦略が打ち出されることになる。
三洋電機が打ち出す営業・マーケティング体制の改革は、01年から松下電器産業が取り組んできた「破壊と創造」で推進した改革に酷似している。開発、製造、営業、マーケティングの壁を取り払い、市場の声を聞いた製品づくりを目指す点では同じといえよう。
ただし、大きく異なるのが、松下電器が総合電機メーカーとしての位置づけを揺るぎないものとしたのに対し、三洋電機が目指すのは、「環境・エナジー先進メーカー」という点だ。
佐野社長は、「こだわるのは環境・エナジー先進メーカー。総合家電メーカーには固執しない」と言い切る。選択と集中をより明確化するなかでの再建計画となる。 07年度上期連結決算は、最終利益が159億円と黒字に転換した。スタートラインに立ったという表現が当てはまる。この3年間がまさに正念場だ。
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