大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>91.デルが日本/アジア市場を重視する理由

2008/03/31 18:44

週刊BCN 2008年03月31日vol.1229掲載

 米デルの業績が厳しい。先頃、同社が発表した全世界における第4四半期売上高は、前年同期比10%増という高い伸びを達成したが、利益では前年割れだった。業績が好調な米ヒューレット・パッカードと比較して、デルモデルの限界という言葉が、日米のアナリストの間で囁かれている。

■間接販売のコスト増が響く

 利益の低下は、EqualLogicおよびEverdreamの買収などによるもの、と同社では説明するが、量販店をはじめとする間接販売ルートへの新規展開によって、ルート開拓に関する費用の発生や、仕組みの変更、在庫の増加などが、収益性の悪化につながっているとの見方もある。

 米デルは、過去8か月間に3200人の社員を削減している。また、経営陣を刷新し、間接販売ルートによる新たな販売手法を模索するとともに、「ITのシンプル化」を旗印にサービス事業に本腰を入れる姿勢をみせるなど、事業構造の大幅な転換に着手している。

 デルにとって、今後の重点分野となるのは、新興市場、ノートブックPC製品、エンタープライズ事業、中小企業向け事業、コンシューマ事業の5つ。この領域への投資を続けることで、将来に向けた成長基盤を構築する必要がある。そして、その鍵を握るのが米国外の市場、とりわけ重点市場のBRICsのうち、中国、インドを抱える日本/アジア太平洋地域での事業拡大ということになる。

■伸び著しい日本市場

 米デルの日本/アジア太平洋地域統括責任者のスティーブ・フェリス氏は、「第4四半期における米国外の売上高は対前年比16%増となり、デル全体の49%を占めた」と前置きし、「米デルが先頃発表した1月末締めの年度業績は、売上高は対前年比6%増の611億ドル。そのうち、日本/アジア太平洋地域の売上高は28%増、出荷台数は41%増と、全体を大きく上回る伸びをみせた。インドの売上高は対前年度比57%増、出荷台数は80%増、中国の売上高は32%増、オーストラリア/ニュージーランドの売上高は29%増となっている。日本/アジア太平洋地域は、今後も成長を遂げる」として、デルの成長をけん引する市場であることを強調した。

 もちろん、日本法人も成長戦略の一翼を担うことになる。「日本では、法人事業の売上成長率が市場全体の2倍以上となり、営業利益は前年比50%増となっている。また、ノートPCの販売台数の急増、エンタープライズソフトの売上高が前年比2倍以上に成長している」と、日本法人のジム・メリット社長は、前年度実績を誇る。

 日本においては、販売チャネルの整備が事業拡大に直結することになるだろう。そのための施策として「PartnerDirect(パートナーダイレクト)」を正式に発足。中堅・中小企業向けのチャネル拡大に向けた専門組織を設置したところだ。さらに、コンシューマ事業においては、ビックカメラやソフマップ、ベスト電器、さくらやに加えて、新たにエディオンでの取り扱いを開始。「これまでデルが接触できなかった顧客層にもリーチできるようになっている」(フェリス氏)とする。日本/アジア太平洋地域の事業拡大が、デル全体の業績を左右するようになってきたのは間違いない。
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