大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>106.松下電器が挑戦する「環境」指標の定着

2008/07/21 16:51

週刊BCN 2008年07月21日vol.1244掲載

 新千歳空港の旅客ターミナルビルを運営する北海道空港株式会社が主催する「新千歳ECO AIRPORT 2008」(ECO PORT 08)が、6月28日-7月13日の日程で開かれた。

■ジオラマで“エコ社会”表現

 これに特別協賛する形で、松下電器産業をはじめとする松下グループは、6月28日から、北海道千歳市の新千歳空港ターミナル2階センタープラザで環境展示会「エコアイディアワールド」を開催。理想のエコ社会を表現した巨大ジオラマと、同社の代表的な環境配慮製品を展示することで、環境への取り組みを訴求した。

 ECO PORT 08は、環境サミットといわれる「北海道洞爺湖サミット」などの支援プロジェクトと位置づけられており、「一歩先のエコへ いま私たちにできること」をテーマに、「くらしのエコ」「北海道のエコ」「世界のエコ」の3つの観点から展示が行われた。

 ECO PORT 08のオープニングセレモニーでは、環境省の鴨下一郎大臣が挨拶。「北海道洞爺湖サミットにあわせ、世界各国の関係者が、まず訪れる場所が新千歳空港。その場において、環境を学んでもらえる。また、国民が、環境に関するさまざまな問題点を、直接目に見ることができる場という点でも意義深いもの」と語った。

 また、松下電器の大鶴英嗣取締役は、「松下グループのエコへの想いや取り組みを、こうした形で紹介できるのは光栄。大きな街のジオラマを用意したのも、身近な形でエコを捉えて欲しいと考えたため。松下グループでは、このジオラマを全国主要都市で紹介してきており、今回の新千歳空港での展示は、最終展示場所となり、その総仕上げになる。沢山の人に見ていただきたい」と述べた。

■環境が商品の強みに直結

 松下電器の環境に対する力の入れようは、競合他社を大きく凌駕する。なぜ、同社はここまで環境に力を入れるのだろうか。

 最大の理由は、商品そのものの消費電力削減が松下電器にとって社会的使命となっているからだ。家庭での電気消費量は、80年代から著しく増加しており、また、家庭で使用される電気のうち、エアコン、冷蔵庫、電気カーペットなどの白物家電商品が占める割合は、全体の50%を占める。消費電力を削減することが電機メーカーとしての社会的責任となる。

 「松下電器が持つヒートポンプコア技術、断熱コア技術、創エネコア技術といった最先端環境コア技術を、日本のすべての家庭に導入したとすれば、CO2排出量は約40%も削減され、年間約6000万トンの削減が可能になる。これは杉の木がCO2を吸収する本数に換算すると43億本にあたる」(松下ホームアプライアンス社の榎坂純二社長)と説明する。

 また、松下電器は中期経営計画「GP3」において、「収益を伴った着実な成長」に加え、「すべての事業活動で環境負荷を削減する」ことを掲げ、成長戦略と環境戦略を中計の両輪に位置づけている。

 「環境が商品の強みに直結する」──最近、大坪文雄社長は、この言葉を繰り返し述べている。松下電器にとっては、環境サミットが終わったあとも、電気製品の新たな指標として、「環境」を定着させることができるかどうかの挑戦ともいえる。
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