大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>108.iPhone 3Gで変わるキャリアとISVの関係

2008/08/04 16:51

週刊BCN 2008年08月04日vol.1246掲載

 iPhone 3Gの人気は、社会現象になるほどだった。テレビ局や一般誌までをも巻き込んだ報道合戦は、かつてのWindows95の発売時を彷彿させる熱狂ぶりだ。

■注目すべきはApp Store

 ソフトバンクの孫正義社長は、「今日(7月11日)は、インターネットマシンが始まる歴史的な日である」とコメント。iPhone 3Gが携帯電話によるインターネット利用拡大のきっかけになるとし、それを裏付けるように、iPhone 3G向けに用意された料金体系は、明らかにデータ通信に重きを置いたものとなっている。

 Windows95の発売を境に、PCによるインターネットが普及したように、iPhone 3Gを境にして、携帯電話によるインターネット普及が予感されるという点でも、Windows95発売時の様相とダブって見える。

 iPhone 3Gに関する報道は、主に、iPhone 3G本体に集中していた。だが、業界としてもう一つ注目しておかなくてはならないものに、App Storeの存在がある。

 App Storeは、iPhone 3G用のアプリケーションをダウンロードできるサイトだ。

 iPhone 3Gならではのマルチタッチインタフェース、加速度センサー、GPSなどの機能を生かしたソフトが有料、無料を問わず、目白押しである。

 「全世界で25万人の人たちが、iPhone向けにソフトを開発している。携帯電話利用の可能性を広げることになる」と孫社長は語る。 ソフトメーカーは、App Storeに対して登録申請を行い、それをアップルが評価したのちに掲載する。そして、ソフトの売り上げの約30%のロイヤリティをアップルに支払うことになる。

■端末メーカーが主導権握る

 注目しておきたいのは、ソフトメーカーが、キャリアの枠を越えたビジネスを展開できるようになる点だ。

 日本の携帯電話市場はキャリアによる垂直統合型のビジネスモデルとなっており、ドコモ向けのソフト、au向けのソフトというようにキャリアごとに分かれたビジネスを余儀なくされていた。

 コンテンツも同様で、各キャリアに対し、企画書を提出し、その企画が通ってから、サービスを開始できるといもうのだ。公式サイトはその最たるものである。だが、App Storeは、iPhone 3Gであればキャリアを問わない。日本のソフトバンクモバイルだけでなく、全世界のiPhone 3Gに対してソフトを供給できるようになる。これまで、日本という限定市場でビジネスを行っていたソフトメーカーが、全世界で展開することができるようになるのだ。

 「今後も引き続き、iPhone発売の可能性を追求していきたい」としているNTTドコモがiPhoneを発売した際にも、ドコモに対して、新たに契約をしたり、企画書の提出をすることなく、ソフトバンクモバイル用に提供しているソフトウェアを、App Storeを通じてそのままドコモ向けのiPhoneに提供することができるようになる。

 iPhone 3Gは、端末メーカーが主導権を握る仕組みを日本の市場に持ち込んだ。こうした変化のタイミングに、ビジネスチャンスを見いだすことができるかが、サードパーティーにとって重要なポイントである。
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