大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>109.ポスト五輪の切り札は「パナソニック特需」

2008/08/11 16:51

週刊BCN 2008年08月11日vol.1247掲載

 8月8日に開幕した北京オリンピック。それにあわせて、量販店店頭も賑わいを見せている。主力となる薄型テレビやBDレコーダーの売れ行きも好調で、日本人選手の活躍次第では、さらに売れ行きが伸びるだろうという期待の声が、業界関係者の間からあがってきている。

■日本人選手の活躍次第

 実際、2004年のアテネオリンピックの際には、オリンピック前半のハイライトである柔道において、日本人選手の金メダル獲得ラッシュとなり、そこから薄型テレビの販売に拍車がかかったという実績がある。

 スポーツニュースで金メダル獲得のハイライトシーンが繰り返し放映されると、それに刺激されて、消費者が薄型テレビを購入するという効果があるらしい。いうまでもなく、日本人選手が活躍しなければハイライトシーンの放映回数も少なくなるわけで、薄型テレビの需要喚起には逆効果となるようだ。業界関係者が日本選手の活躍にやきもきするのも、こうした需要喚起の効果が期待できるからだ。

 今年はPCの売れ行きも順調に推移している。これもオリンピックと無縁ではない。PCでもテレビ視聴できることがひとつの訴求ポイントとなっているだけに、PC業界にとっても、オリンピックで日本人選手が活躍するかどうかは、他人事ではなくなってくる。

 ところで、業界内では早くも、オリンピック終了後の売れ行きを懸念する声が、あちこちから聞かれはじめている。

 先に触れた「方程式」が当てはまるのならば、日本人選手が活躍すればするほど、むしろ、その反動は大きいともいえる。

 もちろん、メーカー各社や量販店は、9月以降、デジタルAV機器の需要が低迷するのは、すでに折り込み済みだ。

 「8月中旬からの約3か月は、需要が落ち込むことになるのは明白。年末商戦に向けて、改めて体制を立て直すことを考えている」と、あるメーカー幹部は語る。

 スポーツイベントとしては、ワールドカップ予選や終盤を迎えるプロ野球などが控えており、これもAV機器の販売体制立て直しの要素のひとつとなる。改めて、ダビング10を訴求するという仕掛けも、ひとつの切り口となる。

■白物家電は“便乗”で

 その一方で、こんな見方をするメーカーもある。

 「10月1日に松下電器産業がパナソニックに社名を変更するのにあわせて、9月から10月にかけて、パナソニックが戦略的な訴求を行うはず。それに便乗するように、販売拡大を狙う」というわけだ。

 なかでも、「ナショナル」から「パナソニック」へのブランド変更を行う白物家電を軸とするキャンペーンが活発化することが想定される。

 自ずと白物家電に対する注目が集まり、白物家電売り場も活性化されることになるというわけだ。

 白物家電メーカーにとっては、とっかかりができるチャンスでもあり、家電量販店にとっても、ポストオリンピックを担う大きな要素といえる。

 年末商戦が本格化するまでは、「パナソニック特需」で乗り切ろうというのが、今年秋の家電メーカー各社の戦略になりそうだ。
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