店頭流通

CDよりも高音質!「リニアPCMレコーダー」が人気 価格は1年前より5000円低下

2008/08/11 16:51

週刊BCN 2008年08月11日vol.1247掲載

 ICレコーダーのなかでも特に高音質で録音できる「リニアPCMレコーダー」の市場が活気を帯びてきた。6月に大手楽器メーカー・ヤマハが参入したほか、既存メーカーは報道関係者向けに都内で録音体験会を開いて音質のよさをアピールするなど、盛り上がりを見せている。「BCNランキング」と家電量販店の売り場担当者の声をもとに最近の動向をまとめた。




リアルな音を収録できる

 昨今のバンドブームの再来も手伝って、中高年男性の間でも人気が高まっているのがリニアPCMレコーダーだ。いわばICレコーダーの高音質版だが、大手家電量販店のなかには特別にコーナーを設けるところもあり、着実に浸透し始めている。

 6月に最も売れたのは、2008年4月発売の三洋電機の「ICR-PS182RM(S)」。機種別販売台数トップ10ではシェア23.7%でダントツだ。容量は1GB。本体に収納できるUSB端子を備え、PCに直差しできるのが特徴だ。BCNが7月24日に集計した市場推定価格は1万3600円。2位は、同じく08年4月発売の三洋電機の「ICR-PS185RM(S)」でシェア14.1%。こちらは容量が2GBのモデルで、同価格は1万7300円。いずれもCDの音質と同等の、44.1kHz/16bitのリニアPCM形式で録音することができる。

主流は96kHz/24bit

 音質でいえば、CDを上回るクオリティで録音できるモデルも多い。アナログ音声をデジタルに変換する際の「キメ細かさ」を表す「サンプリング周波数」をみると、CDの44.1kHz/16bitよりも高音質な96kHz/24bitで録音できる製品が目立つ。これは、業務用の録音機器の音質と並ぶクオリティだ。

 6月のトップ10に戻ろう。3位はローランドが今年3月に発売した「R-09HR」でシェア9.1%。サイズは定期入れ程度。付属する小型リモコンで、離れた場所からも操作できる。市場推定価格は3万8900円。4位は昨年8月発売のズームの「HANDY RECORDER H2」でシェア8.8%。こちらもサイズは定期入れ程度で、やや丸みを帯びたデザインだ。ウィンド・スクリーンやスタンドなどのアイテムを付属する。同価格は2万2200円。2機種ともに96kHz/24bitの高音質録音に対応する。

 店頭でずらりと並ぶ機器を見て気になるのは本体の形。通常のICレコーダーに比べ、サイズもデザインもまちまちだ。

 例えば、7位でシェア4.4%のソニーの「PCM-D50」はA6判程度の大きさ。ほかの製品よりも大きくて重い。本体に「角度を変えられるマイクや録音ボリュームを調節できるダイヤルを付けたのに加え、音声をAD変換するための基盤に大型のものを使っている」(大手家電量販店の売り場担当者)ため。機能や音質重視の製品は、こうした大ぶりのサイズになりがちだ。用途に応じた機能やサイズで選びたい。

 また、海外で販売しているモデルも多く、ボタンや画面表示が英語のモデルがいくつかある。購入にあたっては、こうした点もチェックしたい。

低価格路線の三洋が1位

 メーカー別の販売台数シェアもみておこう。トップは三洋電機で、08年6月では55%と過半数を占めている。リニアPCM形式のなかでも主流の96kHz/24bitではなく、やや音質を下げた44.1kHz/16bitに対応することで価格を下げ、手軽さで支持を集めているようだ。一方、1年前は36.8%を占めていた2位のローランドだが、今年2月以降はズーム、ケンウッド、オリンパスを合わせた4社で混戦を展開している。

 ICレコーダー全体に占めるリニアPCMレコーダーの割合もみてみよう。1年前の07年7月、販売金額の割合は12.3%だった。しかし徐々に拡大し、08年6月には20.5%に達した。一方、販売台数シェアも07年7月に5.8%だったのが、1年後の08年6月には11.1%までに成長。リニアPCMレコーダーは確実にシェアを拡大しつつある。

 税別の平均価格では、6月の時点で2万4526円。1年前の07年7月が2万9713円だったので、およそ5000円下がったことになる。通常のICレコーダーの価格は6月時点で1万1911円なので、比較するとまだまだ高価だが、高音質であることを考えれば、悪い選択ではないだろう。(井上真希子)
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