大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>110.モバイルWiMAXが生むビジネスチャンス

2008/08/25 16:51

週刊BCN 2008年08月25日vol.1248掲載

 日本におけるモバイルWiMAXの試験サービス開始まであと半年、商用サービスの開始まで約1年という段階に入ってきた。

■2011年度にカバー率93%

 日本で唯一、モバイルWiMAXサービスを提供することになるUQコミュニケーションズによると、2009年2月に試験サービスがスタートするのに続き、その年の夏には商用サービスが開始されることになる。試験サービス段階では東京23区および横浜、川崎での提供を開始。商用サービス開始時には、名古屋/大阪/京都/神戸の中部・関西圏へと拡大。2010年度末には全国主要都市へ拡大することで、人口カバー率を76%にまで引き上げる計画だ。さらに、11年度には、93%を超える人口カバー率とする計画である。

 すでに、海外では韓国KTのWibroが、06年6月から、ソウル市内でサービスを開始。北米でも、日本に先駆けて今年9月から、ClearWireやSprint Nextelなどが出資するWiMAX事業会社が、ボルチモアを皮切りに商用サービスを開始。台湾でも政府プロジェクトとしてWiMAXの普及に取り組むなど、今後、110か国でWiMAXに取り組むことになる。

 最も早かった韓国では、Wave1のバージョンであったため、3Gと同程度の速度しか出なかったが、米国で導入するWave2 Phase1では大幅に高速化。さらに日本で導入する予定のWave2 Phase2では、より安定化した環境での利用が可能になる。

 サービス開始時には最大で40Mbps、次のステップでは最大80Mbpsにまで拡張できるモバイルWiMAXの普及は、多くのプレイヤーに、新たなビジネスチャンスを与えることになる。PCの固定環境でしか利用できなかった画像、動画、ゲームなどのダウンロードやアップロードといった使い方が、モバイル環境でも実現できるようになるほか、モバイル環境での常時接続や、ダイヤルアップの手間がなく、有線接続のPC同様、起動時にすぐにつながるクイックコネクションも実現する。

■■熱帯びるWiMAXビジネス

 インテルは、これまでのWiFiの普及戦略と同様に、モバイルPCへのWiMAXチップの内蔵化のほか、MIDやUMPC、スマートフォンといった新たなデバイスにもWiMAX機能を搭載する普及促進策を展開する考えだ。

 さらに、カーナビや、JR東日本が検討している列車内での各種通信サービス、看板や自販機などを対象とした広告配信サービスへの応用のほか、コンテンツプロバイダが専用のWiMAX端末を投入したり、SIerによる会社のイントラネットをWiMAX化し、社内外をシームレスに利用できるオフィス環境提案、ゲーム機へのWiMAX機能の搭載などの動きもあり、想定される範囲は広い。

 WiMAX Forumには400社以上が参加。全世界で標準的に利用できるということは、日本のメーカーが開発したWiMAX関連製品、サービスを、そのまま海外に輸出できることにもつながる。

 UQコミュニケーションズが今年3月に開催した説明会には、171社が参加し、これまでに57社が具体的な協議を開始しているという。モバイルWiMAXによって生まれるビジネスチャンスを掴む動きは、すでに本格化している。
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